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今という時間

今という時間 - [108]

「同床異夢」
関口 敏美(せきぐち としみ)

 学生が在学中に一般 企業で就業体験を積むインターンシップについて知人が話すのを聞いて思った。
 なるほど、学生のうちに実社会を見る機会を持つことは教育的に大きな意義を持つだろう。大学側のねらいもそこにある。実社会の具体像を見させ、学生に将来を意識させ、大学での学習に真剣味を加えるきっかけとしたいのだろう。
 企業の側は若い人がもたらす刺激と職場の活性化に期待するという。この言葉が建前でないとしても、文系学生のインターンシップは、最新の技術的知識をもたらす理系学生(特に院生)についてほど現実上のメリットは明白ではない。
 大学側も企業側もその教育的意義には大いに賛同する、つまり総論賛成だが、その具体化には未だ解決すべき多くの課題やハードルがあるというところか。
 だが、根本的な問題がありはしないか。今はまだ、どちらも自分によいことを「してもらう」ことに目が向いているだけに思える。そのために何かを負担したり、犠牲にする覚悟までは感じられない。
 「遊び人」気分の学生に活を入れてほしい大学と、不況に沈滞した職場に刺激と臨時の人手とあわよくばの人材確保に期待する企業。“同床異夢”は言い過ぎだろうか。
 共通の認識作りから実施上の細々した調整まで時間も手間もかかる。善いことだからとにかく実施、ではブームの中で本来の意義が見失われていくだろう。昨今の多くの大学改革がそうであったように。

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