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今という時間

今という時間 - [097]

「なまこ言葉」
村井 英雄(むらい ひでお)

 この間、NHKの連続テレビドラマ「やんちゃくれ」を見ていて、ふと気になった言葉遣いがある。主人公の渚と母親の会話にでてきた「そうなんや」である。
 母親が、「ずっと一人やったからすき焼きなんて食べたことなかったなぁ」というと、渚が平板な口調で、「そうなんや」と応じる。この用法にひっかかったのだ。むろん方言ではない。最近、女子学生がよく口にするので進取の言葉遣いかと思うが、この受け答えは、相手の言葉の詠嘆形なのか肯定形なのか、どちらだろう。ある学生は「ええ、とか、あっそうなのという相づちの変化形ですよ」といったが、私には理解できない。ところでこの種の言葉を私は 「なまこ言葉」と呼んでいる。言葉に背骨がなく、曖昧な上に、用法に疑問を感じるからだが、頭から否定だけはすまいと思う。というのは、今の日本語は明治時代に始まった口調で、現在も進化中の言語であるからだ。つまり「そうなんや」は、進化の途中に登場してきた新用法なわけで、その命運はまだ判定できない。
 だから「なまこ言葉」に目クジラ立てる気はないが、昔から「豆が煮えたかどうかはっきりしろ」というのが言葉の原則でもある。若者が新語を遣うのはよいが、その語の意味が誰にでも通 じなければ、不完全な言語になる。このことを頭において、若者はおじさんの頭を悩ませない新語を、遣って欲しいものである。

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