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今という時間

今という時間 - [087]

「生きることと食べること」
山本 昌輝(やまもと まさてる)

 「摂食障害」に苦しむ人々の相談を受ける機会が多い。大昔は生きることと食べることは密接に関連していたと思う。何のために生きるのか?という問い以上に、おそらくどうやって食べ(生き)ていくか?という問いの方が遙かに重要で現実味を帯びていたであろう。
 しかし、現在、食べることに生きる営みの本質を理解している人は少ないように思う。昨今のグルメブームは、食を娯楽の一つにしてしまった感がある。
 今夏、佐藤初女さん(森のイスキア主宰、龍村仁監督「ガイア・シンフォニー第2番出演」)にお話を伺ったときに、食べることの本質に気づかされた。食事は地球の生命の移し換えだと彼女は言う。
 そういえば、私の母親も料理には時間がかかっていたことを思い出す。手の込んだ料理であった記憶はないが、とにかく手抜きの料理はなかったように覚えている。そして、それを当たり前のように食してきた自分がいる。両親は今、年寄りだけの生活になって、手の掛からない簡単な料理しかしなくなったという。となれば、母は働く父と成長するこどものために、料理に時間を掛けていたのだと気づかされる。素朴な家庭料理の有難味を感じた。
 食べることは生きること、食事は親が子を思う気持ちを伝えるものだったと感じたとき、ここまで生きてきた自分に新たな感慨を覚えた。

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