2010/05/29【学術研究】
日本学士院 第52回公開講演会
標記の公開講演会が本学を会場に開催されますので、多数ご出席くださいますようご案内します。
事前申込制 定員150名程度
※来場者が収容人数を超えた場合、別室で映像中継をご覧いただくこともございますので、
予めご了承ください。
講演1
電子で見るミクロの世界 外村 彰【物理学】
日本学士院会員
株式会社日立製作所フェロー
日本学術会議会員
理化学研究所基幹研究所単量子操作グループグループディレクター
電子は、“粒子”であると同時に“波”としても振舞う。互いに相容れないこの2つの性質は、アインシュタインをはじめとする多くの科学者を悩ませ続けてきた。しかし、こうした理解し難い電子の振舞いも、最先端技術によって直接検証され、今や、自然科学の最も根本的な現象と見なされるに至った。我々は、レーザーのような“干渉性の良い電子線”を40年にわたって開発し続けてきたが、これにより、電子の波の性質が観察できるようになり、これまで見ることのできなかった“ミクロの世界の不思議”を目のあたりに見ることが可能になった。この手法は物理学の基礎実験のみならず先端技術の極限的な計測手法として期待されている。
講演2
世界における「無の思想」
-西田幾多郎、鈴木大拙、西谷啓治- 上田 閑照【哲学・宗教哲学】
日本学士院会員
京都大学名誉教授
「有と無」は「考えながら生き、生きながら考える」私たち人間の思惟を導く根本語であるが、自覚的に「有」をその基礎範疇とする立場と「無」を基礎範疇とする立場が、世界思想史において際立った伝統を形成してきた。「有」を「有るもの」の究極の根拠とする立場は「無」を「非有」とし、その故に「有」に依存すると見る。それに対して、例えば「有は無より生ず」(老子)と見る立場にとっては「無」は「有に非ず、無に非ず」という高次の否定であり、限りない創造性を秘めている。二つの伝統の出会いからどのような意義を持つ新しい思索が生まれたか、西田、大拙、西谷三者の哲学に即して考察してみたい。