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そして、教壇へ。~彼らと教職支援センターの日々~

先生になるにはどうすればいいですか?2018

(1) 大乗 香さん

私が傷ついてる場合じゃない!その気づきが教壇への道を開いてくれた。(大乗 香)[2018年3月 教育・心理学科卒/2018年度 京都市教育委員会採用(小学校)]

「こっち来んな! お前なんか先生やない!」
子どもはかわいい、子どもが大好きだ。そんな想いから教職を目指そうとしている諸君、その当の子どもから、こんな言葉を投げつけられたらどう思うだろうか。学習支援員として学校ボランティアに通い始めて間もなく、大乗はそんな言葉の暴力にさらされた。支援員は、支援を必要とする児童の側によりそい、声を掛ける。「ほら、教科書を開いて」「いまどこ読んでるか分かる ?」それが、その子には“うざい”と受け取られた。
「さすがに傷つきましたよ、私だって人間ですから」だが、大乗はそこで逃げ出さずに、踏みとどまった。「その子がなんでそんなことを言うのかって考えたら、その子なりに背負ってきているものがあるんやないか。“こっち来んな”って、きっと何度も言われてきた…。私が傷ついてる場合やない、と思いました」
次の日からも、大乗はその子に笑顔を見せ、話しかけ続けた。もちろん、すぐに結果が出るわけではない。笑顔も少し引きつっていたかもしれない。そんな時、ボランティア先の学校の先生の言葉に救われた。「しんどかったら離れてもええよ。先生がつぶれたら子どももつぶれるから。大丈夫、私らがおるし」
チーム学校、という言葉がある。学校と地域が一体となって、さまざまな専門家が児童・生徒に関わっていく、という理念だが、大乗はその先生の言葉を聞いて、この学校はチームだ、と思った。ここで、私は1人ではない、と。

教育実習にて。子どもたちも真剣に耳を傾ける。

大人だって、承認欲求が満たされたら頑張れる。

大学に入った当初の大乗は、教職を目指す勉強にそれほど熱心に取り組んでいたとは言い難かった。まぁ、それも無理はない、遊びたい盛りの18歳が、長い受験生生活からやっと解放されたのだから。授業に出ない、出てもほとんど聞いていない。周りから“チャラい”とまで言われたほどだ。そんな大乗が本気を出し始めたのは、やはりボランティアを経験してからだ。「最近、顔つきが変わったよねぇ」教職支援センターのスタッフから、そう声を掛けられたこともある。
「見てもらってるんだなぁ、って嬉しくなりました。そうなると、ますます頑張らなきゃって思いますよね」
大乗は、さらに貪欲にさまざまなボランティアの機会を求め、センターもそれに応えて、どんどん紹介してくれた。ボランティア先では、1日が終わって「ありがとうございました」と帰る前に、そこの先生にさまざまな疑問をぶつけて考えを深めようとした。その頑張りもさらに評価に繋がっていった。認めることでさらにやる気を引き出すのは、子どもたちを指導する上で重要なポイントだが、大乗自身が、認められることで成長してきた。なんだ、子どもと一緒じゃないか。

「おおたにキッズキャンパス」に参加。子どもたちと関わる経験をどんどん積んでいく。

人の心に種を蒔く。それが教師の大切な仕事。

ボランティア先の先生や教職支援センターのスタッフ、アドバイザーの先生など、多くの先達に支えられて、大乗は教員採用試験に合格。現在は卒業論文の仕上げに集中している。
テーマは「道徳教育」。
小学校では今年から、中学校では来年から「教科」としてカリキュラムに組み込まれる。だが、人の心は本当には分かるものではないし、簡単に変えられるものでもない。この子はこう変わりました、というように道徳教育の成果を明示的・数値的に示すことは難しい。けれども大乗は、そこに1粒の種を蒔くことはできる、と言う。
「今すぐの変化じゃなくてもいいと思うんです。卒業して何年も経って、大人になってからその種が芽吹いてくれてもいい。そのために、できるだけたくさんの種を植えていきたい」
それは、この春から改めて教壇に立つ大乗の「教師宣言」とも言える。彼女がボランティア先のあの子に植えた種も、いつかきっと大きく育っていく。

“チャラい”と言われた1年生の頃

自灯学寮の寮生として参加した学園祭の思い出。この頃から教職への意識に変化が出始めた。

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