年の離れた弟と妹がいる。共働きの両親に代わって幼稚園に迎えに行くのが日課だったが、思春期真っ只中の中学生時代、本音を言うと苦しかった。放課後、友だちからの誘いを断る日々。やりたいことだってある。「自分の時間を割いてまで、なぜ?」という思いがよぎる。
「でも、年齢を重ねるうちに気もちが変わったんです。友だちを連れて、幼稚園にいっしょに迎えに行った日もありました。弟や妹を見て『いいなー』と言われたときには、他の人にはできない経験ができているんだなと改めて思いました」
弟とキャッチボールをしたり、妹に言葉の発音を教えたり。上達していく様子を見るのは、本当にうれしかった。「小学校の先生になったら、こんなふうにずっと子どもの成長に関わっていけるのか」。幼い弟妹がいたからこそ教職を目指そうと思えたことに、今はとても感謝している。
先生になるにはどうすればいいですか?2016
(14) 本城 貴寛さん
採用試験に向けて本城は、2つの勉強会に参加した。ゼミの勉強会では、指導案を作って順番に模擬授業をおこない、コメントシートに意見や感想を書いて交換し合った。もうひとつの勉強会では、京都市の教師塾で教わった方法を参考に、本城が手作りしたシートを使った。
「手元に記録が残るから、客観的に自分の長所や癖が分かり、課題が見えてくるんです」
ゼミの岩渕先生や教職支援センターのアドバイザーには、発問のタイミング、声のトーン、立つべき位置まで丁寧に指導いただいた。小論文の練習では、初めは原稿用紙が添削で真っ赤になるほどダメ出しを受けたが、それでも何度も書き続けた。
おおたにキッズキャンパスも良い勉強になった。歴史かるたを作る企画では、子どもたちが自分で考えて読み札を作れるよう事前に資料を準備。低学年の児童には絵札の色塗りができるようにした。また、博物館の展示説明会では、パネルシアターを作成したこともある。本来小学生向けにはあまり使われない手法だが、幼稚園免許を取得する友だちからの提案で取り入れてみたところ大好評。子どもたちに意欲を持ってもらうための工夫、そこから学びへつなげていくおもしろさを知った。
それら様々な積み重ねが自信となったおかげだろう、試験当日は臆せず挑むことができたと思う。
1年次から通った学校ボランティアや教育実習で実感した。現場で30人以上の子どもたちと向き合うことは、弟妹2人の面倒を見ることとはやはり違う。1人ひとりに目を配る大変さを思い知るとともに、集団の中でしか見せない子どもたちの表情にも出会った。協力する姿勢、他人を思いやる気もちは集団行動を通して生まれる。教師にとっても、1対1でじっくり関わることと、集団の中にいる子どもを理解することは、どちらも重要だ。
たとえば授業中、教室内をぐるぐる歩き回る先生の姿を見かけたことはないだろうか。あれはただ歩いているだけではないと本城は言う。勉強につまずきのある子どもの様子を確認する意図を持って動いているのだ。しかし本人にも周囲にも、先生が1人を特別扱いしていると感じさせてはならない。他の児童にもしっかりと声をかけて回る。
「1人ひとりに寄り添い、それと同時に、みんなが楽しく授業を受けられるようにしたい。クラス全員分の成長を見られるなんて、感動ですよね!」
そんな決意と期待に目を輝かせる本城の隣には、現在は小学生になった弟と妹が。
「お兄ちゃん、学校の先生になるん?」
——そう。「2人だけのお兄ちゃん」だった本城に、4月からは「大勢の子どもたちの先生」としての使命が、新たに加わるのだ。
子どもたちからの手紙
ボランティア、教育実習先の小学校でもらった大切な手紙。特に、2年次から支援を続けてきた子どもたちとは、たくさんの思い出がある。





