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きょうのことば

きょうのことば - [2015年04月]

幸福の秘訣は、こういうことだ。あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。

「幸福の秘訣は、こういうことだ。あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。」
『ラッセル 幸福論』 岩波文庫 172頁

 バートランド・ラッセル(1872-1970)は、哲学、論理学、数学基礎論などの学究的な研究を行う傍(かたわ)ら、倫理や社会問題をめぐる活動にも精力的に関わったイギリスの哲学者です。ラッセルは、1930年に出版されたベストセラー『幸福論』で、彼自身の過去を顧(かえり)みて、なぜ不幸せな子供時代から転じて、人生を楽しむことができるようになったのかを明らかにしています。彼は、自分を取り巻く世界の事物に注意を払うようになった結果、徐々に自分自身にとらわれなくなったのでした。

 ラッセルは、私たちの情熱と興味が内ではなく、外へ向けられているかぎり、幸福をつかむことができると説いています。他方で、自分のことばかりを考えることは、それが恐怖、妬(ねた)み、罪の意識、自己憐憫(じこれんびん)、自惚(うぬぼ)れといった感情のいずれであるにせよ、私たちを自分の殻にとじこめます。幸福を求める行為は、一見快楽を重視しているようでいて、実際には健全な道徳と同じ効果をもたらす、とラッセルは言います。というのも、自分の外側に目を向ける人は、外の世界を旅することで幸福を感じるばかりか、その旅から戻ったさいには、冷静に、かつ最善の方法で、自分の内面の問題に対処することができるからです。

 幸福な人は、人生に対する情熱と幅広い興味を持っています。まず、幸福の鍵となるのは「熱意」そのものです。熱意のない人生は、空腹でないときに食べる食べ物に似ています。次いで、「仕事」と「私心のない興味」の両立をラッセルは勧めます。たいていの仕事は、時間を有意義に使うのに役立ちますし、建設的な要素を持ち得るのなら、なお喜ばしいものです。大学生にとって、この「仕事」は学問に励むこと、と言い換えられるでしょう。同時に、余暇を満たし、緊張を解きほぐしてくれる興味も必要であるというのが、ラッセルの考えです。そうした関心は、物事がうまくいかないときにも、私たちが思考を切り替えるのを助けてくれます。

 幸福と不幸は表裏をなしています。外の世界を心から楽しむことができれば、自分のなかの不毛な感情に振り回されて消耗することはなくなるでしょう。ラッセルは、標題のことばの後に、あなたの興味を惹く人や物に対する反応をできるかぎり友好的なものにせよ、と続けています。大学では新しい年が始まりました。心の窓を広くあけて、大学生活が満ち足りたものになるよう努めてみましょう。今こそ、ラッセル流の幸福の処方箋(しょほうせん)を実践するのに最適な時節です。

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