ここからサイトの主なメニューです

Home > 読むページ > きょうのことば > ものごとは心でしか見ることができない。大切なことは目には見えない。

きょうのことば

きょうのことば - [2008年02月]

ものごとは心でしか見ることができない。大切なことは目には見えない。

「ものごとは心でしか見ることができない。大切なことは目には見えない。」
サン=テグジュペリ(『プチ・プランス』グラフ社 p.100)

 サン= テグジュペリ(1900~1944)の『Le Petit Prince(プチ・プランス=小さな王子)』は、内藤 濯(あろう)の名訳『星の王子さま』を通して日本でも広く読まれてきました。近年、新たな翻訳がいくつも書店に並ぶようになり、それを機会に改めて手にとった人も多いのではないでしょうか。このお話には、読み手にその意味を深く考えさせるような心に残ることばがたくさん出てきます。中でも冒頭に掲げたことばは、友だちになった狐(きつね)がプチ・プランスとの別れにあたって「秘密の贈り物」として語ったもので、物語の中で最も重要な意味をもっています。

 一軒の家ほどの大きさの「小惑星 B612」に生まれたプチ・プランスは、そこに咲いた1本の美しいバラとことばを交わし親しくなります。しかし、未熟さゆえに、見栄っ張りでデリケートなバラと行き違いを生じ、ひとりぼっちで星々を巡る旅に出ることになります。やがて地球に降り立ったプチ・プランスは、1年の間に蛇や5000本のバラと「こんにちは」「さようなら」を繰り返し、1匹の狐と友だちになってようやく「大切なこと」に気づかされるのです。

 狐は、「目に見えない大切なこと」が何であるのかをプチ・プランスに教えるために、彼が小さな星に置き去りにしてきたバラとの「つながり」を思い出させます。そのバラがプチ・プランスにとってかけがえのない存在であるのは、外面的な美しさのためではありません。面倒な要求に振り回されながら世話をすることを通じて「なじみ」になり、そこに「絆(きずな)」が結ばれたからなのです。そのような関係は目には見えません。心でしか見ることができないのです。そのつながりを思い出そう。それに対していつまでも「責任」を持とう。この二つの勧めが、狐からプチ・プランスへの「秘密の贈り物」なのです。

 この「秘密の贈り物」を鍵とするなら、『プチ・プランス』は、孤独な〈いのち〉が様々な出会いを通じて、失われていた「つながり」を見出す旅の物語として読むことができます。狐が教えた「心でしか見ることのできない大切なこと」とは、「いのちのつながり」にほかなりません。目には見えない「いのちのつながり」に心を配り、そのつながりに対して責任をもって生きていこうと狐は教えたのです。自らの星に帰ったプチ・プランスは、きっと地球でなじみになった狐やパイロットだけでなく、旅の途中で出会った孤独な大人たち、言葉を交わした蛇や5000本のバラとのつながりをも思いながら日没を眺め、なじみのバラと羊の世話をやいているのではないでしょうか。

Home > 読むページ > きょうのことば > ものごとは心でしか見ることができない。大切なことは目には見えない。

PAGE TOPに戻る

ここからサイトの主なメニューです