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きょうのことば

きょうのことば - [2013年07月]

あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。

「あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。」
『バガヴァッド・ギーター』(『バガヴァッド・ギーター』岩波文庫 39頁)

 『バガヴァッド・ギーター』(以下『ギーター』)は、インドの叙事詩『マハーバーラタ』の一部であり、ヒンドゥー教徒の間で最も敬われている聖典の一つです。標題のことばは、王族(クシャトリヤ)である主人公アルジュナに対し、ヴィシュヌ神の化身クリシュナが、「自らの職務を遂行せよ」と説くなかで言われています。しかもその職務の遂行は、結果に囚(とら)われず無心になされるべきとされています。

 そもそも行為の結果とはどんなものでしょうか。もちろん、現代の私たちはほとんどの場合、何らかの目的を持って行動しますから、『ギーター』の言う「無心に」ということは一旦脇に置きましょう。しかし目的を果たそうと一生懸命努力しても、必ず願いが叶うとは限りません。例えば、不景気の時代に生まれたせいで、いくら頑張ってもなかなか就職が決まらないといった状況は、いくらでもありえます。つまり行為の結果は、その人の努力だけでなく運命によっても影響を受けます。

 そして努力・運命・結果という三者のうち、その人の責任が最も問われるべきなのは「努力」に他なりません。運命や結果には、自分の力を超えた要素も関係するのに対し、努力はそうではないからです。だからこそ『ギーター』でも、結果に囚われず自らの職務に専心せよと説かれます。しかし、現代社会を見るとどうでしょう。まさに成果主義全盛の時代と言えないでしょうか。とにかく競争に勝って経済的・社会的に結果を出した人が成功者として評価され、その過程における努力や手段の倫理性などはあまり問題とされない風潮が蔓延しているように思われます。

 もちろん「結果に囚われない」というのは、結果に対して責任がないという意味ではありません。むしろ私たちは、好ましくない結果が降りかかってくる場合でも、それを引き受けて生きていかねばなりません。しかし、そうした場合でも、もしそれまでの過程を振り返って「自分は一生懸命努力した」と思えるならば、その結果も受け止めたうえで次の一歩を踏み出して行けるのではないでしょうか。大切なのは、結果ばかりに囚われ一喜一憂するのではなく、どれだけ目の前の人生の課題と真摯に向き合い、一瞬一瞬を大切に生きるかという点にあるはずです。

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