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今という時間

今という時間 - [176]

「漫画家の反戦平和」
蜂屋 良彦(はちや よしひこ)

 かれこれ40年も前になろうか。友人の結婚披露宴に招かれた。隣席に同年齢の男性が座っていて、何かと話しかけてくるので、自分は心理学を研究していること、最近は外国でミサイルに鳩を乗せて人間の代わりに操縦させようと試みているらしいこと、平和のシンボルを戦争目的に利用するなど以ての外であることなど、お酒の勢いもあって、かなりおしゃべりしたらしい。
 数週間後にその友人から電話が入った。隣席の男性は将来を期待される新進の漫画家であり、彼から鳩の話をもとに長編漫画を発表したのでお礼を、との伝言を伝えてきた。
 ところでその漫画は、前半はこちらの話した内容に沿っていたが、後半部分がユニークな展開を見せていた。ミサイルはレーダー上の目標を鳩がつっつくことによって誘導されてゆくが、敵地の上空で突然Uターンし発射基地に逆もどりしてくる。基地の司令官はこれを基地のレーダーで発見し大声で叫んでいる。「しまった!!鳩に帰巣本能があることを忘れていた!!」
 この漫画家は今日、サラリーマンの生活を描いて当代随一といわれるS氏である。片時も取材を怠らずに、反戦平和をユーモアたっぷりに訴えるその姿勢に大変感動したものである。何かとキナくさい昨今、武力に訴えることの愚かさを、人それぞれの持ち場において訴えねばならないと思う。

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