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今という時間

今という時間 - [166]

「レディ・メイド」
谷口 奈青理(たにぐち なおり)

 多くの人が、身近な人の気持ちをはかりかねて、どのようにふるまうべきかに悩んでいる。叱っていいのか、励ました方がいいのか、ここは一つ、突き放した方が本人のためなのか・・・。このような迷いが「こんな時どうしたらいいか」が書かれた本を手に取らせる。
 マニュアルに手を伸ばすのは自分が不安だからである。失敗しないように、傷つかないように、誰かが保証してくれる安心で安全な方法を求めるのだ。しかし皮肉なことに、そのような接し方こそが、相手のこころをますます遠ざけかねない危険をはらんでいることに気がついているだろうか。
 ここ一番というべき大事な時にこそ、「正しい答え」を求めたくなる。しかし本に書かれているのは「誰かが誰かにやってみてうまくいった方法」である。そのコピーがはたして「その人」のこころに届くだろうか。大事な時であればあるほど、「私だけ」のものでなければならないのではないか。
 本当に大切な時の対応は、自分で考えるしかない。どうしたらいいだろうかと考えて考えて考える。それだけ考えたにもかかわらず、実際には思いがけないことをしてしまったりする。しかも不思議なことに、それでこそうまくいくということが少なくないのだ。何がなされようと、考える過程そのものが相手に気持ちを伝えるのかもしれない。
 あなたからその人への気持ちの伝え方に唯一絶対の正解はない。

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