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今という時間

今という時間 - [157]

「やさしくしてよ」
谷口 奈青理(たにぐち なおり)

 豊かな時代である現代は、ストレスの時代でもある。時代のキーワードとなった「癒し」は、アイドルやゲームにさえ「癒し系」と呼ばれるものを登場させた。アロマテラピー、音楽療法などの流行はヒーリング・ブームと呼ばれている。ここで求められている癒しは、自分で自分にやさしくすること、と考えられるかもしれない。
 自分で自分にやさしくすることには、ともすると後ろめたさが伴う。自分のことを後回しにして他の人のために尽くすのは確かにすばらしいことである。しかし、そんなケナゲな「私」に誰かが気づき、「私」にやさしくしてくれることが、暗黙のうちに期待されてはいないだろうか。もしも思うようにやさしくしてもらえなければ「私」は傷つき、人にやさしくすることもできなくなってしまうだろう。
 「癒し」は、誰もがやさしさを求めている時代のシンボルである。その中で人にやさしくしていくには、自分に元気なゆとりがなければならない。そのために今必要とされているのは、遠慮なく自分で自分にやさしくすることなのではないだろうか。これは自分へのケアを他の人にばかり依存しないことであって、自己中心主義とは異なるものだ。堂々と自分で自分にやさしくすること。それは甘やかしではなく、自律に近いのではないだろうか。

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