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今という時間

今という時間 - [118]

「深追いゲーム」
滝口 直子(たきぐち なおこ)

 賭博は、遊びである。勝っても負けても、ある時間、ある金額に達したら、賭博という行為を止めて、日常に戻るのが、まっとうというものだ。ところが時間、金額どころか職業や家族の忍耐の限度を越えてまで、賭博を続ける人たちがいる。こういった人の賭博行為によくみられるのが、負けの深追いである。
 負けたら、負け、そのお金はなくなったのである。ところがどうにかその負けを取り戻そうと、食事ものどを通 らず、ろくに眠りもせず、必死の思いで賭博を続行する。勝ったら勝ったで、その勝ちを倍増しようと、けなげな思いで賭博を続行する。このような賭博者の深追いに寄りそって、これまた深追いしているのが、その家族である。
 家族は、最初は知らずにベイルアウト(しりぬぐい)する。「たったこれだけのお金で信用を失ったら」「若気のいたりで」、家族としては当然のことである。しかしベイルアウトすれば、賭博は確実に悪化する。2回目、3回目、4回目、しりぬ ぐいの回路にはまり込んでしまうと、そう簡単には抜け出せない。「この前、あんなに無理してやったのに、いま止めれば台なしよ。」家族も、これまで費やした時間やお金、愛情の深追いをしているのだ。すればするほど、深追いの輪は、ますますはずみをつけ回転していくというのに。その輪が、しかし、止まる時はくるものだ。それは、その人が信じること、そして情を越えた愛を発見した、まさにその時である。

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