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今という時間

今という時間 - [053]

「ネギと人間」
鄭 早苗(ちょん ちょみょ)

 韓国の民話にネギと人間にまつわるものがある。人間がネギを食べなかった頃の話。どうかした拍子に人間が牛に見えてしまう時がある。すると人々は牛だと思って人間を殺して食べてしまう。ある時、ある男が自分の兄弟を牛と見違え、早速殺して食べてしまった後、それが兄弟であったことに気づく。あさましい自分と嘆かわしい世間から逃れようと、男は放浪の旅に出るが、どこに行っても人間どうしが食べあっている。
 人間どうしが食べあわない国を探しているうちに、男はすっかり年とってしまったが、ようやく牛は牛、人間は人間ときちんと見分けがつき、人々が仲良く暮らしている国にたどり着く。「この国ではどうして牛は牛、人間は人間という見分けができるのですか。」「私たちも人間が牛に見えて食べあっていた頃もあったのだが、ネギを食べてから見分けがつくようになったのです。」
 男はすぐさま自分の国に帰りネギを植えるが、ネギが育つ前に牛にまちがえられて殺されてしまう。しかしその後、ネギを食べるようになった人間は、もう人を牛に見違えなかったという『ネギをうえた人』の話である。
 ネギを食べる私達はもはや人間を牛に見まちがうことはないが、エリート校出身、高級官僚、名門の出などの要素に目がくらんで、人間を人間と見なしていないのではないかと思うことがある。現代のネギはなんだろう?

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