子どもと一緒に学び続ける教師になりたいという思いを持って勉強を続ける渡邉さんは、コロナ禍での自宅学習期間を通して、社会が変わっていく様子を実感したと言います。直接会えなくても、授業の内容を「自分事」として捉えることができれば、歴史上の出来事も身近なこととして実感できます。技術を駆使し、工夫を重ね、「教えるだけ」の授業から発展させて、未来につながる学びを表現したいと、志を高く持っています。

02 しんどかったコロナ禍での学びとその先

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谷:今はコロナウイルス感染拡大のピークが下がりましたが、去年の前期はみんな窮屈だったと思います。どんなふうに過ごしましたか?
 
渡邉:去年の前期は授業がすべてオンラインだったので、家の中で課題に取り組むという生活でした。5月末くらいまではアルバイトもできなくて、家で1人の時間が増えて、だらけてしまうこともあったので、早く大学に行きたいなと思っていました。
 
谷:私のゼミ生の話によると、課題が多すぎて提出が遅れてしまったり、出しても出してもまた課題が出て大変だったとか。どうでしたか?
 
渡邉:事前に録画されているものを視聴してから課題に答えていくという授業もあれば、本当に文面だけで課題が送られてきて、それを読んで考えを書くというものも多くありました。
谷:それって結構しんどかったんじゃないですか?
 
渡邉:かなりたくさんの量があるので、計画的に取り組まないと間に合わないですし、課題管理にとても苦労したなという印象があります。オンライン授業では、学生は自分の回答を送っただけなので、本当にこれで合ってるのかなっていう不安感はありました。友達の意見を聞く場がなかったので。みんなどれくらい書いてるのかなとか、どんなこと書いてるのかなとかはすごく気になりました。
 
谷:孤独だったよね。先生方も手応えがなかなかつかめなくて苦闘されていたと思いますよ。私の場合はオンラインでの双方向でやったけど、なかなかうまくいかないこともありましたね。結局できなかったんですけど、私は「YouTuberになろう」と声かけをしました。つまりコップとかお砂糖とか、家にあるものを使って授業をする。そういう設定にしたら、すごく柔軟な発想が出てきましたよ。やっぱり工夫っていうのは大事ですね。オンラインの授業でも、グループ分けのような機能を使って、一人で受けてない感を出すことは大事ですね。そういうのを効率的に使うと、オンラインもまんざらではないんですけどね。
 
渡邉:少し落ち着いてきた頃は、アルバイトに行ったり、サークル活動を再開させたりしていました。大学の入構禁止期間中はSNSを使って1年生に活動内容を発信したり、今後の活動について話し合ったり。もしもコロナ禍がここまでにおさまったらこうしようとか、いろいろなパターンを考えてましたね。
谷:いつも一緒にいた人と会えなくなって、一度集まろうかってなったときはみんなすごくうれしくなって、実際に会ったときは新鮮でしたね。だからコロナ禍で大変だったし恐怖もあったけれど、やっぱり自分の生活とか近しい人とのつながりを見直すことができたなと思います。緊急事態宣言による入構禁止期間で、一番何が残りましたか?
 
渡邉:社会が変わっていくんだなっていうことを実感しました。GIGAスクール構想(※)が前倒しされたり、自分自身もICTに向き合っていかなければならないという実感がわいたりして、自分がこれまで受けてきた教育を、そのまま子どもたちに教えたらいいんじゃないんだなということを実感しました。
 
谷:家に一人でいると、やっぱり映像とか音とかをすごく求めるのでね。それで動画を見過ぎたりして、それによる子どもたちの問題も指摘されていたりね。実は私も、大学時代の同級生に薦められてヨガとかストレッチの動画を見るのにハマってしまいました。
 
渡邉:私も、サークルのグループの中でヨガが流行りまして、みんなで同じ動画を見ながら同じ動きをしてました(笑)。
(※GIGAスクール構想……Society 5.0の時代を生きる子どもたちのために、1人1台の端末と高速通信環境の整備をベースに「公正に個別最適化され、創造性を育む学び」を実現させる文部科学省の施策。)

PROFILEプロフィール

  • 谷 哲弥

    教育学部教育学科 講師



    1981年3月 京都教育大学教育学部理学科卒業。1981年4月 京都府長岡京市・向日市・乙訓郡大山崎町にて小学校教員として勤務(~2018年3月)。2018年3月 京都教育大学大学院教育学研究科教科教育専攻理科教育専修(修士課程)修了。教育学修士。2018年4月 大谷大学教育学部着任。
    研究内容については、次の2つ。
    (1)小学校理科において、好奇心いっぱいの児童が持つ能動性を引き出すために必要な指導や教材開発について研究を進める。また、主体的対話的な学びとは何かを問いつつ、科学的な物の見方や考え方を養うことを目指す授業づくりについて研究を進める。
    (2)現職教員や教員養成段階の学生に対して、集団的省察活動を試み、教員としての資質・能力の熟達化を図る取組とその検証について研究を進める。



  • 1年生の時は1人で勉強することが多かった。最近はゼミの仲間と勉強をすることが多くなり、その中で新たな気づきがあることや、一緒に頑張れる仲間の存在が大事だと痛感している。
    時には「本当に教師で良いのか」と自問自答することもあるが、志は高く、子どもと一緒に学び続ける教師になりたいという思いを持って、勉強を続けている。