幅広く社会のことを学びたいと思って入学してきた鈴木さんは、コロナ禍で様々な制限を受けながらも、積極的に大学生活を楽しもうと活動しています。こんな時期だからと、できるだけ他の学生と関われるように配慮してくれる先生の授業は、自分の頭できちんと考えなければいけないことも多く、とても刺激になっています。目の前にある課題に対して社会学的にアプローチしていく方法は面白く、今後の勉強にも知的好奇心をそそられています。

05 つながったご縁を伝えずにはいられない

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田中:現代社会学科には「公共社会」「人間関係」「現代文化」っていう3つの「視点」があるけど、2年生からの「視点」選択のことについてはどう考えてる?
 
鈴木:僕は「現代文化」で考えてます。自分がゲームやアニメが好きやったりすることもあるし、将来的にはテレビ関係の仕事をしたいから、「公共社会」とかよりも文化面の方を学びたいなと思っています。こういう方向に進みたいなっていうのは、高校生のときに大学案内のパンフレットを見て、自分が興味ある分野を学んで伸ばせるんやったらここがいい、と思ってからずっと考えてました。
 
田中:テレビ関連の仕事をしたいっていうのは、漠然と考えている感じなの?
 
鈴木:今やっているアルバイトがメディア関連なので、なんとなくそっちの方に進みたいって希望している感じです。まだ1年生なのでわかんないですけど、いろいろ考えていきたいとは思いますね。
田中:大谷大学には、メディア関係のアルバイトしてる子、君の他にもいたよね?
 
鈴木:僕はあんまり知らないですね。まだ他の学科の人と喋る機会っていうのもあんまりないので。
田中:そうか。同じ関心を持っている人を少しでも見つけられると良いよね。
 
鈴木:はい。先生のゼミでやってる内容はどんなことですか?
 
田中:社会学の教員にはいろんなことをやってる人がいますけど、私は1・2・3年生を担当しています。私のところでは、自分に向かい合って本を読むっていうこともとても大切なんですけど、何か物を使ったりグループワークをさせたりした方が、刺激を与え合ったりするところがあるもんですから、1年生でも発表のコンテンツをみんなで作らせてるんですよね。授業でやったように、身近な、ファストフードの商品のこととか。でも最初はお互い知らない者同士ですごく話しにくいだろうから、まずは関係を作っていくところからだね。2年生ではベーシックな社会学の教科書を読んでから発表の準備をさせたりしますね。3・4年生になると、自分自身のテーマを深めていくということをやっています。
 
鈴木:先生が社会学をやるようになったきっかけっていうのは何ですか?
 
田中:私の専門は文化人類学で、アフリカ地域研究っていうのをやってまして。あんまりいろんなところには行ってないんですけど、一人旅をしていて、日本の外のことを研究したいなと思ったんですね。それでベナンという国で調査を始めました。もう1つのきっかけは、人の縁ですね。私の先輩に大学院でアフリカ研究をしてらした方がいて、その先輩の影響もあって。アジアとかだと地域的に近いから先行研究もたくさんあるんだけど、アフリカ54ヵ国の中にはまだ行ってないところもたくさんあるので、行ってみたらって言われて。
 
学生の皆さんからは、やりたいことが見つからないとか、自分は何を研究したらいいですかって聞かれるんだけど、何でもやり始めたらだんだん面白さがわかってくるというか、引くに引けないものができてくるんですよ。文化人類学って、良くも悪くも人との関係が全てなんです。インタビューするにしても、その人の家に住み込みをさせていただいたりしながら話を聞いていったりしますから。
これは私の勝手な思い込みなんですけど、そうやって一緒の時間を共有していくと、目の前にいるこの人たちがこれだけ話してくれたご縁を、他の方に伝えないではいられないというか、このまま私だけが聞いているのは申し訳ないという思いが出てくるんです。これだけ大切なことをこれだけの時間を使って私に伝えてくれたのに、私がそれを他の人に伝えないではいられないって私は思ったんですね。
 
鈴木:そうやって研究をされて、先生はなんで教員になろうと思ったんですか?
 
田中:伝え残さなきゃいけないっていう思いを実現する方法の1つが、教員になるっていうことだったって感じですね。だから教員という1つの道を意識するようになったのは、大学院に入って、アフリカ研究のその先輩に会ってからですね。
 
大谷大学には教育学部もあるから、本当にキラキラした目で「小学校の先生になりたいです」っていって入学してくる学生さんもたくさんいるでしょ。現代社会学科の他の先生方の中にも、教員になるって志してきた方も多いと思うんですけど、私は流転の者なんですよね。だから学生さんに申し訳ないなと思うところがあって。その分、私ができることは一生懸命伝えたいと思っています。

PROFILEプロフィール

  • 田中 正隆

    社会学部 現代社会学科 准教授



    2002年 一橋大学大学院社会学研究科 博士学位(社会学)取得修了、2003年 国士舘大学政経学部非常勤講師、2005年 高千穂大学教養部助教授、2007年 高千穂大学人間科学部准教授 を経て、2017年 大谷大学文学部社会学科准教授。
    アフリカはベナンという国で人類学的調査を始め、地域社会のミクロな視点から現代西アフリカのマクロな政治、経済変動をみすえる研究へと広げてきた。親族にもとづく社会構造と文化要素である在来信仰ブードゥの関連を調べながら、そこにおけるモノ=物質の位置づけに焦点をあてた。それは、いま社会科学で議論をよんでいるモダニティ、グロバリゼーション、市民社会、デモクラシーといった諸概念とも深く関わっており、私の調査地での具体的な事例にてらしてこれらの現象を再検討している。



  • 大学のホームページやパンフレットで情報を細かく確認し、オープンキャンパスにも参加。大谷大学ならしっかり学べそうだと思い、受験した。現代社会学科を選んだのは、幅広く社会のことを学びたいと思ったため。
    学外サークルに参加したりアルバイトをしたりと、積極的に大学生活を楽しむ一方で、授業では自分の頭できちんと考えなければいけないことも多く、とても刺激になっている。目の前にある課題に対して社会学的にアプローチしていく方法は面白く、今後の勉強にも知的好奇心をそそられている。