小さな頃から実家のお寺を継ぎたいと思ってきた高嶋さんは、その夢を叶えるべく真宗学科に入学を果たしました。周りにはお寺出身の人も多くて楽しく過ごせる半面、クラスメイトの多くが元々お寺を継ぐことは考えていなかったということを知り、自分との違いに驚きます。
いずれお寺を継ぐ日のために、寮の仲間に助けられながら、親鸞聖人や法然上人についてじっくり学び、研鑽を積んでいます。

07 読めない漢文の勉強にいつも付き合ってくれた先生方

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高嶋:先生はどういう経緯で大谷大学の先生になったんですか?
 
本明:僕はわりと紆余曲折というか、大学も大谷大学じゃないし、しかも理系で数学を専攻してたんですよ。実家はお寺だったんですけど父親がいたから、大学を卒業して市役所に勤めたんです。でも私が23歳のときに父親が倒れて亡くなってしまいました。その後、大谷派の教師資格も持ってなかったから、仕事を辞めて大学院に入ったんです。そこで勉強したらお寺に帰ろうと思っていたけど、もうちょっと勉強したいなあって思うようになって、そのまま博士後期課程に進みました。そうしたら助手になることになって、博士論文を書いて……。常に真宗学の勉強が足らへんと思いながら、気づいたら今に至る感じです。だから今も教えているというよりはみんなと一緒に勉強しているんです。
高嶋:大学院に通いながらお寺のこともやってたんですか?
 
本明:そうそう、今も先生しながらお寺のこともやってるし。田舎の小さなお寺だけどね。助手をした後に大学の聖教編纂室で親鸞聖人が書かれた『教行信証』の翻刻といって、そのまま文字として起こして、みんなが読めるものにするという仕事を7~8年して、その後に本山の教学研究所などで聖典の研究をしてきたんです。そして9年ぶりに大学に戻って来ました。
 
高校の数学の免許も持ってるから、以前は大谷高校に数学を教えに行ってた時期もあります。いろんなことをしてきましたよ。だから高嶋さんが真っすぐにずっとお寺のことをと思って生きてきたっていうのはすごいなと思います。高嶋さんのように、迷いなく真宗学科に来たっていう人だけでなく、迷っているというか、紆余曲折を経る人も多いと思います。
 
高嶋:逆に私は、理系の大学に行ってから文系の大学院に行くっていう、いろんなことをやっている人を尊敬します。
 
本明:大学は理系だったから、大学院に来たときは漢文が弱くてね。当時あった短期大学部に木越先生や三木先生が講師としていつもいて下さっててね。だから年令も近いので「これどう読むんですか?」っていつも聞きにいってた。前にいた大学では、先生に質問をしようとするときちんとアポイントメントを取らなければいけない程の距離感があったんだけど、大谷大学は、研究室(※)には先生がいつもいる。それはすごく有難いことだと思います。
 
それで私が漢文を読めないって相談したら、木越先生や一楽先生が「一緒に読もう」って勉強会に付き合って下さったんです。そういう助けがあって何とか修士課程も終えられたので、この大学の先生と学生の距離の近さはこれからも大事にしていきたいなと思っています。おそらく真宗学の先生はみんなそうだと思います。たとえばどういう本を読むべきかとかは、どの先生も聞きに来てくれるといいなと思っているから、行くといいと思いますよ。
 
高嶋:2年生になったらコースを選択しますけど、先生は今ならどのコースを選びますか?
本明:私は「思想探究コース」かな。親鸞聖人がどういうことを考えてどういうことを課題にされたのかっていうことをもっと知りたい。平等の思想とかも、なぜその時代にそういうことを伝えようと思ったのかをもっと知りたいという気持ちがあるね。
 
でも差別の問題とか社会の問題を考えていきたいなら、「現代臨床コース」もいいよね。どちらにしても思想を探求していくのは大事なんですよ。「思想探究コース」だから部落差別の学びが関係ないというわけじゃなくて、根が一緒だから現実の問題にも当然結びついてくるだろうし、逆に部落差別の問題から入ったとしても、それをどうやって超えようとしたかっていう親鸞聖人の思想と結びついているから、自分の入りやすさで選ぶと良いかもしれないね。どちらにしても、高嶋さんだったら学びたいという意欲があるから良いと思いますよ。これからの勉強が楽しみですね。
(※研究室……当時の「短期大学部仏教科一般研究室」。2018年度より「仏教教育センター」として、真宗大谷派教師資格取得を目指す人はもちろんのこと、勉強がしたい人、相談がある人など、広く学生に開かれている。)

PROFILEプロフィール

  • 本明 義樹

    文学部 真宗学科 講師



    1972年京都府生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。大谷大学任期制助手、大谷大学聖教編纂室嘱託研究員、真宗大谷派教学研究所研究員、真宗大谷派聖教編纂室主任編纂研究員を経て、2021年大谷大学文学部着任。
    親鸞の思想形成の解明に取り組んでいる。特に親鸞が曇鸞浄土教をどのように受容し展開したのかを確かめるため、親鸞加点本や『教行信証』に引用される『浄土論註』の文を精読している。また『教行信証』の自筆本である「坂東本」を書誌的な視点からもアプローチし、最晩年に至るまでの思想深化の意義を明らかにしたいと考えている。



  • 実家のお寺を継ぐことが夢で、中学生の頃には大谷大学を受験することを決めていた。真宗学科はお寺出身の人も多いため楽しく過ごせる一方で、お寺を継ぐことは考えていなかったクラスメイトも多く、自分との違いに驚いた。
    入学する前は少し不安を抱いていた寮生活は、他の寮生ともすぐに仲良くなり、京都観光へ出かけたりする間柄。美味しいご飯に有り難さを感じながら、日々充実した大学生活を送っている。いずれお寺を継ぐ日のために、親鸞聖人や法然上人についてじっくり学び、研鑽を積んでいる。