ちょっと堅苦しいかもと思って入った仏教学科は、蓋を開けてみると、浅井さんにとってとても楽しいところでした。様々な仏教のエピソードも、そこに潜む本質を知るのが面白いと言います。仏教が長く伝えられてきたのは、世界各国でそこに見出された価値を言葉で表現した蓄積があるからだと教えられ、自分の言葉で語ることの重要さを噛み締めています。新たな世界に踏み出す勇気を持つことこそが努力することだと心に留め、一層勉強に励むつもりです。

06 仏教を面白がる

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釆睪:仏教に関するエピソードがずっと語り継がれてきているっていうのは、これまでの言葉の積み重ねがすさまじいからですよ。歴史が長いだけじゃなくて、民族や言語も違う人たちが積み重ねてきた批評があるから。でも、その歴史に胡坐をかきすぎてたっていうのも反省点だと思うんです。だんだん仏教は文化遺産になってきちゃった。
 
僕はお経はある意味エンターテイメントだと思ってるんだけど、一般的にはお経って、クソ真面目な話をしなきゃいけないような雰囲気があるじゃない。真面目っていうのは、要するに今の自分たちの価値観に合うってことなんだけど、価値っていうのは時代で変わる。だから大したことないんだよ、真面目なんて。そこからまた精進として一歩踏み出さないといけない。
 
最初、浅井さんは仏教がちょっと堅苦しいって言ってたけど、仏教がこれまで積み上げてきた努力の成果を尊敬するあまり、そこから一歩も踏み出そうとしなかったっていうことなのかなと思います。こうやって大学で教えている私にも、その責任の一端があったりするのかなって思ったりもするんですけど。だから仏教は「興味深い」だけじゃなくて、「面白い」と思ってほしいなと思います。
 
でも難しいんだよ。過去から積み上げてきたものが大事だって言ったら、そこから外れる物はダメだって言いたくなるし。そこから外れなきゃいけないってことは、過去から積み上げてきたものに背を向けることになっちゃうから。なかなかその辺が難しい。おそらく仏教だけじゃなくて、いろんな分野の人が苦労してるんでしょうけどね。浅井さんは、まだ仏教のどういうところが面白いってこともわからない感じですかね?
 
浅井:そうですね。やっと、堅苦しいっていうイメージがなくなった感じです。2年生のコースもまだどこにしようかって悩んでる状態で。
釆睪:コース選択はね、自分の重点はどっちなのかなっていうだけですよ。「現代仏教コース」だからといって仏典を読まなくていいってことではないし、「仏教思想コース」だから現在的な視点を忘れていいってことでもないですし。どっちも大事で、軸足の問題なので、まずはどう仏教を楽しめるか、かな。今は映画を楽しんでるでしょ?その面白いと思ったことをどう浅井さん自身の言葉で他人と共有するかですよね。映画研究部では見るだけ?
 
浅井:昔は作る方もやってたみたいですけど、今はやってないです。機会があればやってみたいなとは思いますね。大学生のうちにいろいろなことをやってみたいと思ってます。
 
釆睪:そうですね、世界をぜひ広げてほしいなと思います。京都には太秦映画村もありますし。僕もただの通行人だけどエキストラをやったことありますよ。例年、時代祭では谷大にもキャストの募集があるんです。だいたい鎌倉時代の格好をさせられるんだけど、そこでハマってしまって、地元に帰って自治体職員になって、そこで仮装行列を始めちゃった人もいます。新しい扉を開いたんでしょうね。学生の中にはコスプレイヤーもいますしね。
浅井:いるんですか?
 
釆睪:いますよ。写真見せてもらったけど、まるで別人だね。みんな、何かしらの自分の世界を持ってるんですよ。

PROFILEプロフィール

  • 釆睪 晃

    文学部 仏教学科 教授



    1969年、大阪府生まれ、滋賀県育ち。安曇川高校卒業。明治大学文学部文学科、大谷大学文学部仏教学科を卒業。1999年、大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。2004年大谷大学文学部着任、2010年同大学准教授、2021年同大学教授、現在に至る。
    異国の宗教でしかなかった仏教が、中国においてどのように受容されていったのかに興味を持っている。特に、5世紀初頭に活躍した鳩摩羅什は、大乗仏教を初めて体系的に中国に伝えたという点で注目すべき人物である。鳩摩羅什自身はどのような思想を持っていたのか、また、その周囲にいた人物は鳩摩羅什からどのような影響を受けたのかを中心に研究を進める。



  • 父親に薦められたことと、大学の雰囲気や環境が自分に合ったことから、大谷大学を目指すことにした。入学して実際に授業を受けてみると、堅苦しいかもと思っていたイメージとは異なり、伝説が多い仏教のエピソードも、そこに潜む本質を知るのが面白いと感じている。
    学業以外では映画研究部に所属しており、大学生のうちにいろいろなことをやってみたいと思っている。将来の目標も最終的には父親の仕事を継ぎたいと考えているが、大学卒業後はまず社会に出て経験を積む予定。