ちょっと堅苦しいかもと思って入った仏教学科は、蓋を開けてみると、浅井さんにとってとても楽しいところでした。様々な仏教のエピソードも、そこに潜む本質を知るのが面白いと言います。仏教が長く伝えられてきたのは、世界各国でそこに見出された価値を言葉で表現した蓄積があるからだと教えられ、自分の言葉で語ることの重要さを噛み締めています。新たな世界に踏み出す勇気を持つことこそが努力することだと心に留め、一層勉強に励むつもりです。

03 勉強するなら他の人を巻き込んで

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釆睪:他のエピソードについてはどう?
 
浅井:まだあまりやってなくて、「天上天下唯我独尊」をやったくらいです。
 
釆睪:あれも明らかに伝説だよね(笑)。でも、おそらく、昔の人もあれを事実だと思ってたわけじゃないと思うんです。それでも大事なことが込められていると思うから、伝えられてきたんだと思います。
困ったことに、昔の人は普通に生活してたらそういうエピソードはいっぱい聞いて知ってたんですけど、今の僕たちは勉強しないと知れないんですよ。そこはマイナスかなと思いますね。
 
だから授業で取り上げられたことだけを勉強してると、大したことをしないまま4年間が終わりますよ。授業で取り上げる内容なんて、たかが知れてます。何となくやってたら卒研を書くときにも困るしね。卒研は自分で疑問を持たないと書けないから。教室での勉強は真面目にやってきたんだろうけど、自分で疑問を持てなかった学生さんは、結構卒研のテーマを相談しに来ますよ。「私は何をテーマにすればいいですか」って。
だから「天上天下唯我独尊」についても、なんでこれが伝えられてきたんだろうって疑問に思うといいですね。昔の人が何となく理解していたものを、今の僕たちはひょっとしたら明確に言葉にしないと受け取れなくなっちゃってるのかもしれません。何となく感じ取るってことも難しくなっちゃったし、かなり真剣にいろんなことを学ばないと、仏教から何かを学ぶことは大変になりました。そういう意味で、勉強は教室だけでなく、自分でしていただきたいなと思います。
 
大谷大学って便利なところで、自分で勉強会を作れるんです。響流館(こうるかん)3Fの総合研究室に行くと、今どんな勉強会が開かれているかわかるから、それを見て参加してみるのも良いし、助教の先生に「こういう勉強をしてみたい」って相談して、自分で勉強会を企画してみてもいいかもしれないですね。僕もお坊さんの伝記を読む輪読会とか、意味が分からないでもとりあえず声に出してお経を読む会とか、結構参加しました。僕自身が学生の時もいろいろやりましたし。
 
今、僕たちはゲームとかテレビとか、刺激が強くてすぐに面白がらせてくれるものに慣れちゃってるけど、お経はそういうものじゃないからね。勉強しないと身につかないので勉強するしかないんですけど、1人で読むのはしんどいんですよ。だから僕は人を巻き込みました。毎週何曜日の何時からはここに来てこれを読む、って決めて。
 
浅井:まずはやってみるってことですね。
釆睪:そうそう。経典も、他の人と一緒なら読めるんですよ。逆に言うと、今の我々はそうでもしないとなかなか読めない。だからぜひ他の人を巻き込んでください。

PROFILEプロフィール

  • 釆睪 晃

    文学部 仏教学科 教授



    1969年、大阪府生まれ、滋賀県育ち。安曇川高校卒業。明治大学文学部文学科、大谷大学文学部仏教学科を卒業。1999年、大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。2004年大谷大学文学部着任、2010年同大学准教授、2021年同大学教授、現在に至る。
    異国の宗教でしかなかった仏教が、中国においてどのように受容されていったのかに興味を持っている。特に、5世紀初頭に活躍した鳩摩羅什は、大乗仏教を初めて体系的に中国に伝えたという点で注目すべき人物である。鳩摩羅什自身はどのような思想を持っていたのか、また、その周囲にいた人物は鳩摩羅什からどのような影響を受けたのかを中心に研究を進める。



  • 父親に薦められたことと、大学の雰囲気や環境が自分に合ったことから、大谷大学を目指すことにした。入学して実際に授業を受けてみると、堅苦しいかもと思っていたイメージとは異なり、伝説が多い仏教のエピソードも、そこに潜む本質を知るのが面白いと感じている。
    学業以外では映画研究部に所属しており、大学生のうちにいろいろなことをやってみたいと思っている。将来の目標も最終的には父親の仕事を継ぎたいと考えているが、大学卒業後はまず社会に出て経験を積む予定。