自分の意見を、的確な言葉にして人に伝えるという作業を日ごろから意識して行っている河村君は、授業後も気軽に友達と意見を交わしているものの、実は人と接するのが苦手だそうです。それでも好奇心が勝って、探究を深めていける大学の学びの過程は、とても面白いと言います。興味を持ったことのみならず、苦手なことに対してもきちんと向き合い、「なぜ」を問う姿勢は、今後の研究において必ず生きてきます。「いつでも話を聞く」という教員に支えられ、河村君の成長は続きます。

03 4年間学ぶために、最適の大学に来た

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西尾:哲学科に来ようと思った直接のきっかけは?
 
河村:僕はもともと歴史が好きで。歴史漫画もよく読みましたし、テストも良い点を取ってて、夜間の高校に入り直しても歴史はよくできたので、歴史学科に進もうと思ったんです。
 
その一方で、中学の時にテニスをやってて、試合が多くなってくると、僕の弱い部分が試合に出てしまっていたんです。そこでよく友達からメンタルについて指摘されて。先生からメンタル関係の本を渡されたりもしたんですけど、僕のメンタルってそんなにダメなのかなって思って。それで、スポーツ心理学みたいなものにも興味を持ったことがあったんです。
 
それで進路を考えたときに、歴史と心理学とで迷ってたんですけど、ちょうど谷大のオープンキャンパスに来たんです。そしたら何となく、「ここ、合うな」っていう気がしたんです。また来てみようっていう気になって。他大学のオープンキャンパスにも行ったんですけど、2回目にここに来た時に「やっぱり合うな」って思って。計4回来ました(笑)。
西尾:すごいね。オープンキャンパスで何があったんだろう?
 
河村:先生の距離が近いというか。僕自身、何を感じたのか、言語化はできてないんですけど。他の大学と違うなと思ったのは、僕は資格を取りに大学に行きたいんじゃなくて、学ぶために行きたいと思っていて、ここは学ぶのに最適だと思ったんですよね。
 
西尾:それは嬉しいですね。入学してからギャップはありましたか?
 
河村:他の学生さんを見て、目標の差とか違いについては感じました。「わからないからもういいや」っていう考えの人もいるし、「すごい意見を持っているな、この人から学ぶことは多そうだな」って刺激を受ける人もいますね。
 
西尾:入試方法は、自己推薦だよね?
 
河村:はい。西尾先生が面接官でした。僕は歴史の事象とか起こった事柄に興味があるわけじゃなくて、その人が何を考えたかについて考えるのが好きだったので、哲学科を選びました、って発言しました。
 
西尾:覚えてる!今思い出したわ。
河村:その後に合格通知が来て、「僕、ここで学べるんだ」っていう感覚がわいてきて嬉しかったです。合格したら、入学前課題として『ソクラテスの弁明』を渡されたんですけど、ちょうど祖母が亡くなりまして。ソクラテスは、「死ぬことは悪ではない」って言ってますよね。
 
西尾:悪かどうかわからないってね。
 
河村:はい。ソクラテスは、知らないことを知らないと認識するのは良いことだって言ってて、祖母の死は悲しくはありましたけど、それが良いことか悪いことかは僕には知りえないので、まあいいのかなっていう思考になって。ソクラテスがクッションになったというか。
 
西尾:無知の自覚やね。
 
河村:はい。そういう考え方もあるんだって気づかされまして。それで哲学への意識が上がりました。

PROFILEプロフィール

  • 西尾 浩二

    文学部哲学科 講師



    2003年京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2008年大谷大学任期制助教、その後非常勤講師、学習支援主任アドバイザーを経て、2019年大谷大学専任講師。
    西洋哲学、とくに古代ギリシャ哲学(ソクラテスやプラトン、アリストテレスなど)に関心を寄せて研究してきた。現在の研究テーマは「幸福(よい人生)」。制約ある境遇を生きる人間にとって、幸福とは何か、幸福の条件とは、運や性格や徳との関係は……。古代ギリシャの哲学者たちが残した思索や近現代の議論を手がかりに、幸福という古くて新しい問題の本質に迫りたい。また、明治期に西洋哲学がどのように受容されたかについても研究している。



  • 進路を考えたとき歴史学と心理学とで迷っていたが、歴史の事象に関わった人物が何を考えたのかについて考えることが好きなんだと気づき、哲学科を志望した。大谷大学については、オープンキャンパスに何度か参加してみて、「やっぱりここが自分には合う」と確信し、受験することにした。
    自分の意見を、的確な言葉にして人に伝えるという作業を日ごろから意識して行っている。授業後も気軽に友達と意見を交わしているものの、実は人と接するのが苦手。それでも好奇心が勝って、探究を深めていける大学の学びの過程はとても面白い。興味を持ったことのみならず、苦手なことに対してもきちんと向き合い、「なぜ」を問う姿勢で成長し続ける。