自分の意見を、的確な言葉にして人に伝えるという作業を日ごろから意識して行っている河村君は、授業後も気軽に友達と意見を交わしているものの、実は人と接するのが苦手だそうです。それでも好奇心が勝って、探究を深めていける大学の学びの過程は、とても面白いと言います。興味を持ったことのみならず、苦手なことに対してもきちんと向き合い、「なぜ」を問う姿勢は、今後の研究において必ず生きてきます。「いつでも話を聞く」という教員に支えられ、河村君の成長は続きます。

02 小さい頃から「なぜ?」と考えていた

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西尾:サークルとかには入ってる?
 
河村:入ってないです。大学で学ぶことが僕が本気を出す場所であって、サークルとかバイトとかは余剰の力でやるものだと思ってるんで、そこに関しては、傾倒する必要はないかなと思っています。
 
西尾:やってみたいとは思わない?
 
河村:今は思わないですね。そっちに傾倒してしまう傾向がありますし、僕はマルチタスクっていうのが苦手なんで、一意専心と言いますか、学業のことに集中しておきたいんですよ。
 
西尾:前期は充実してたけど、後期に入って気持ちが落ちてきているっていうのはなんで?
 
河村:単純に、学びたい科目が多くなくて。前期は、授業を受けて、微々たるものかもしれないですけど、自分自身が成長できているなって感じられた部分があって。でも後期の授業は、得るものが大きいやつが少ない気がします。
あと、大学って、勉強をするだけじゃなくて、友達との関係構築とかも考えなきゃいけないですよね。そういうことを考えて、心の中でマルチタスクをやっちゃってるというか。授業に集中できていない自分がどう見られているのかなとか、周りの人との関係をどうしたらいいのかなって、同時並行で違うことを考えちゃってるので、難しいです。
 
西尾:高校の時からそうだったの?
 
河村:明確に意識したのは、進路を考えだした頃です。そういう自分の傾向に気づいたというか。でも、昔から無意識的にそうしていたんだと思います。幼稚園の頃とかも、絵本の読み聞かせをしてもらっていても、些細なことが気になったり。
 
西尾:その頃から、いろんなことを考える癖がついた?
 
河村:はい。「なぜ?」っていうのをすごく考えてましたね。例えば、僕は水木しげるの妖怪の絵が好きなんですけど、彼の言い方によると、「妖怪は、見ようとしてないから見えない」んです。読者に考えさせるというか。そこから広がるんですよね。小学生の頃、妖怪を特集したテレビ番組を見たんです。江戸で浮世絵が流行った頃、同時に妖怪も流行ったと。江戸の妖怪は、お偉いさんをイメージしながら描くんですよ。風刺画みたいな感じで。そうやって昔の人はストレスを発散してたっていうのが面白いなと思って。妖怪をきっかけにして学んだことは結構ありますね。
 
西尾:哲学の芽っていうのは、小さい頃からあったんだね。

PROFILEプロフィール

  • 西尾 浩二

    文学部哲学科 講師



    2003年京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2008年大谷大学任期制助教、その後非常勤講師、学習支援主任アドバイザーを経て、2019年大谷大学専任講師。
    西洋哲学、とくに古代ギリシャ哲学(ソクラテスやプラトン、アリストテレスなど)に関心を寄せて研究してきた。現在の研究テーマは「幸福(よい人生)」。制約ある境遇を生きる人間にとって、幸福とは何か、幸福の条件とは、運や性格や徳との関係は……。古代ギリシャの哲学者たちが残した思索や近現代の議論を手がかりに、幸福という古くて新しい問題の本質に迫りたい。また、明治期に西洋哲学がどのように受容されたかについても研究している。



  • 進路を考えたとき歴史学と心理学とで迷っていたが、歴史の事象に関わった人物が何を考えたのかについて考えることが好きなんだと気づき、哲学科を志望した。大谷大学については、オープンキャンパスに何度か参加してみて、「やっぱりここが自分には合う」と確信し、受験することにした。
    自分の意見を、的確な言葉にして人に伝えるという作業を日ごろから意識して行っている。授業後も気軽に友達と意見を交わしているものの、実は人と接するのが苦手。それでも好奇心が勝って、探究を深めていける大学の学びの過程はとても面白い。興味を持ったことのみならず、苦手なことに対してもきちんと向き合い、「なぜ」を問う姿勢で成長し続ける。