将来はプロフェッショナルの書き手になることを目指して、創作ができる大学を選んで谷大にやってきた西本君は、すでに何編かの小説を書き上げ、各種の賞に応募もしています。読み手の共感を得るためには、視点を変えてみると良いという先生のアドバイスを受けながら、授業や文藝塾で得られる学びを作品作りに生かそうと、気持ちを新たに過ごす毎日です。数年後には卒業論文の代わりとなる作品を書くべく、日夜研鑽を積んでいます。

05 踏み込むために、まずは疑問を持つ

OTANI'S VIEW

更新日:
國中:授業の感触はどう?
 
西本:自分のやりたいことをやれるような授業を取っているんですけど、やっぱり自分の興味のないものは熱が入らなくて。多少知識としては入れておかないといけないなとは思ってるんですけど、モチベーションが上がらなくて、朝起きて「今日は語学か……」っていうのはあったりします。
國中:まあそのあたりは、作家になるんだったらクリアしないとね。そこは我慢してもらうしかない。大学には概論と講読とゼミがあるでしょ。高校とは授業の形式が違うけど、どうですか?
 
西本:ドラマとか映画で見るような、前に先生が立ってしゃべって、それを自分のノートに取るっていう講義形式は、大学に来たなっていう実感はありますね。
 
國中:私の授業でも、私の言ったことをメモする人もいるし、しない人もいます。私が紹介する本は、この大学の図書館にあるものばかりではないので、メモはしておくといいと思うんですけどね。資料を探そうとしたときに、自分なりの調べ方をどれだけ身につけているかっていうのも、大学の学びの中では大事なことなんですよ。講義の後で質問するとか、研究室に行って聞いてみるとか、そういうことはやってます?
西本:僕はあんまりそういうことはしないです。質問がすぐに出てこないタイプって言うか、昔からそうなんですけど、「わからないことがあったら質問してね」って言われるけど、わからない箇所がわからないって言うか。
 
國中:それ、ちょっと問題だなあ。
 
西本:そうなんですよ。例えば、式に当てはめる場合、自分は「こことここにしか入らないから、答えはこれ」って思うんですけど、「ここにこれが入らないのはなんで?」って言われても、逆になんでそう思うのかがわからないと言うか。
 
國中:大学の勉強というのは、その踏み込むところに意味があるんです。「ここはこういう解釈になってるけど、違うんじゃないか」「こういう解釈にすると、この問題がこぼれ落ちるんじゃないか」とか、そういう疑問点にすがりついて、先へ進めようとするのが研究なので、与えられたものをそのまま左から右へとうまく流すだけではね。ちょっと観点を変えてみると、わからないところが見えてくるかもしれませんね。図書館は利用しますか?
 
西本:いえ、自分はまだです。
 
國中:利用の仕方は教えてもらったでしょ?この大学は良い図書館がウリなんだけど、本だけじゃなくてパソコンやプリンターなんかも使える。それは在学生の権利だから、利用してもらいたいと思いますね。卒論も、直前まで推敲して提出するとなると、家が近くても間に合わなかったりするので、最終段階では図書館でプリントアウトする人が結構います。だから今から馴染んでおくと良いね。

PROFILEプロフィール

  • 國中 治

    文学部文学科 教授



    早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程(日本近代文学専攻)単位取得満期退学。韓国大田広域市大田実業専門大学専任講師(日本語および日本事情を担当)、神戸松蔭女子学院大学文学部総合文芸学科教授などを経て、現職。
    昭和前期を代表する詩誌「四季」の文学者たち、特に三好達治と立原道造と杉山平一を中心に研究している。この3人は資質も志向も異なるが、詩形の追求と小説の実践、それらを補強する理論の構築に取り組んだ点では共通する。時代と社会にきちんと対峙しえなかったとして、戦後、「四季」は厳しい批判にさらされる。だが、日本の伝統美と西欧の知性を融合させた「四季」の抒情は奥が深くて目が離せない。



  • はじめは地元の大学を考えていたが、高校の担任の勧めで大谷大学を知る。すでに何編かの小説を書き上げ、各種の賞に応募もしており、大谷大学には創作できる場所もあるということに惹かれ、受験した。
    読み手の共感を得るためには、視点を変えてみると良いという先生のアドバイスを受けながら、授業や文藝塾で得られる学びを作品作りに生かそうと、気持ちを新たに過ごす毎日。将来はプロフェッショナルの書き手になることを目指し、数年後には卒業論文の代わりとなる作品を書くべく、日夜研鑽を積んでいる。