坪田さんは、幼児教育の現場に出られる体験学習の多さにひかれて、幼教に入学してきました。2020年はコロナ禍のために例年とは異なったカリキュラムになりましたが、オリジナリティあふれたプロジェクトに、楽しみながら一生懸命取り組んでいます。おもちゃを作ったり、子どもの遊びを考えたりすることはもちろん、どういう保育者になりたいか、どういう保育の在り方が好ましいのかという根本的な問いにも自分なりの考えを持ちながら、憧れの保育者を目指して頑張っています。
※教育学部教育学科(初等教育コース/幼児教育コース)は2018年4月に文学部教育・心理学科を改組し開設

06 今の生を充実させる保育の仕方

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坪田:先生はどんな研究をされてるんですか?
 
西村:私は教育学が専門で、教育の方法とかカリキュラムを担当させてもらっています。「プロジェクト保育」っていうのがあって、例えば遊んでるときに、大きなダンゴムシと小さなダンゴムシがいるのに気づくでしょ。そういう発見や問いをみんなで調べてみるとか、じゃあ飼ってみようとか、子どもたちが問いをつないで、それに保育者がアドバイスをしながら作っていく、子ども主体の活動ベースの教育方法について研究しています。
 
子どもたちは考えたことを発信するので、その言葉を拾って、「ほんとだね」って共感しながら発展させていく。先生が教えるんじゃなくて、一緒に調べる。「こんな本があったよ」って本を持ってきたり、幼児が虫の飼育箱に「お花を入れたい」って言ったら、「そんなん入れても仕方ないよ」とは言わないで、一度は入れてみたり。そういうことを経験させる。そうすると、自分が興味を持っているものについて、知りたいことを知れるっていう欲求を満たせるんですよ。「知りたいことを知れる」って、今の生を充実させることでもあるんです。保育っていろいろなやり方があるけど、子どもたちが自分の興味の赴くままに発展させていくのを援助するような保育の仕方がいいかなと私は思っています。
 
坪田:私もそういうのが好きです。先生はなんでこの分野に入られたんですか?
西村:もともとは絵本の研究がしたくて、スウェーデン語をやろうと思って外大を受けたんですけど、落ちてしまって。それで浪人中に勉強に通っていた建物に保育所もあって、子どもたちが預けられていたんです。4月当初はワンワン泣いてたのに、1カ月2カ月するとみんな楽しそうにしてるんですよ。あんなに泣いてた子たちが今はこんなに笑っていて、これは何なんだろうと思って。この子たちが大きくなって社会を担うことを考えると、小さい子を育てるのって面白いなと思って保育者を目指すことにしました。
 
それで大学で教育学のゼミに入ったんですけど、アメリカの進歩主義教育を知って、面白いなと思って。子どもの興味関心からスタートする教育っていうのを初めて知って。卒論ではキルパトリックっていう人の研究をしたんですけど、そこからずっと続いています。
 
もう1つのきっかけは、20代後半に大学院生の頃、海外に出るチャンスがあって、いろんな国から来た高校生たちを連れて、各国を調査をするっていうプロジェクトのリーダーをしたんです。彼らと話しながら調査をするっていうのがすごく面白くて。いろんな国を移動しながら1年間を過ごしたんですけど、高校生が議論してこんな研究できるんや、子どもって凄いなって思って。幼児もそうなんですよね。ゼロから作れるんですよ。そこで確信したというか。
 
坪田:そういう取り組みは、普通の幼稚園でもやってるんですか?
 
西村:普通の保育の中でやってるところはありますよ。例えばお化けを子どもたちがイメージして、お化けの家を作ろうって。お化けっていう架空のものの家はどういうのが良いのかって議論しながら。それを裏で保育者がどうやって援助するか。子どもたちは素直なので、保育者が「それいいね」って言ったら、簡単に保育者の好みに引っ張られるんですよ。だから保育者がどれだけ誘導しないでいけるのかというところも大事ですね。どこまで援助してどこまで子どもに任せるのかっていうのはすごく難しいですけど、子どもの姿をよく見ていくと面白い。これから授業の中でも少しずつ紹介していきますから、楽しみにしていてください。

PROFILEプロフィール

  • 西村 美紀

    教育学部教育学科 准教授



    1996年神戸女学院大学家政学部児童学科卒業。2002年9月奈良女子大学大学院人間文化研究科比較文化学専攻(教育学)博士後期課程満期退学。2004年5月英国ケンブリッジ大学大学院教育学研究方法論コース修士課程修了。奈良女子大学文学部人間行動科学科助手、種智院大学非常勤講師、種智院大学特任講師、大阪経済法科大学非常勤講師、東大阪大学非常勤講師、奈良女子大学非常勤講師を経て、2008年大谷大学短期大学部幼児教育保育科講師着任。2018年大谷大学教育学部教育学科 准教授。
    子どもが自分たちで、問いや目的を持ち、探究していくプロジェクト保育について研究している。プロジェクト保育では、保育者は、一定の見通しを持ちつつ、子どもたちの課題意識ややってみたい気持ちを大切に、子どもの気づきや思いつきを拾いながら、他の子どもたちと共有・交流・議論するプロセスを援助することで、活動の展開を支えていく。このような活動は4歳児や5歳児を中心として実践されているが、実は乳児期特に1歳後半から2歳児において、子ども同士でイメージの共有がいかに楽しめるようになっているかが大切になると考えている。子ども同士でのイメージ・考えの共有を援助する保育者の関わりについて関心を持っている。



  • 中学校の時に職場体験で保育士の楽しさに気づき、保育士になろうと思った。幼児教育の現場に出られる体験学習の多さにひかれ、大谷大学を受検。
    オリジナリティあふれたプロジェクトに、楽しみながら一生懸命取り組んでいる。おもちゃを作ったり、子どもの遊びを考えたりすることはもちろん、どういう保育者になりたいか、どういう保育の在り方が好ましいのかという根本的な問いにも自分なりの考えを持ちながら、憧れの保育者を目指して頑張っている。