高校とは異なる勉強の仕方にも慣れ、友達とも楽しく過ごし、バイトもして充実した学生生活を送っている濱田さんですが、自分のことを「何にも関心がない人」だと言います。何かに夢中になりたいけど、本気で頑張れることが見つからない。見つからなくてもそこそこ楽しい生活は送れているし、今後も安定した生活をしていきたいから、将来は公務員志望。そんな矛盾と若干の懸念に、残りの学生生活でどう折り合いをつけていくのか。濱田さんの「これから」に注目です。

07 アニメを切り口にして難しい話を理解する

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野村:現代社会学科では、2年生のときにゼミ選択をするんです。〈公共社会〉、〈人間関係〉、〈現代文化〉っていう3つの視点があって、コースのように明確に区切られてるわけじゃないんだけど、自分の興味が〈人間関係〉にあるなら、それを専門にしている先生のゼミを選ぶといいよって推奨してる感じですね。どれを希望してる?
濱田:とりあえず〈人間関係〉をやろうと思っていて、渡邊先生のゼミに行きたいなと思っています。
 
野村:そうか。渡邊ゼミは人気ゼミやから入れたらいいですね。焦ることもないんやけど、2年になったらちょっと主体的にやらなあかんね。
 
濱田:今、ちょうど野村先生の「現代文化論」を受けているんですけど、難しいです。最初の頃は全然わからなかったです。最近アニメの話とかになって、ようやく入りやすくなったなって思って。捕鯨の話の頃からようやくわかりだしたかな。
 
野村:日本の捕鯨を題材に、異文化理解の難しさをテーマにした講義をやったんだよね。でも、その回までの授業、どんなとこがわからんかったんやろ?言って欲しかったなぁ。学生が尋ねてくれたらこっちもリプライしやすいのでね。学生は全然分かってないのに、こっちは通じてるって勝手に思い込んでることもあるし、恥ずかしがらずに聞いてね。
 
授業に関しては、まずは、これからの学びを深めるための基礎学力をつけてもらおうと思ってやってる部分もあるけど、そういう「社会学やるなら知っとかなアカンよ」的な内容は、あんまりおもしろくなかったりするんだよね。自分の研究自体は、わりとオーソドックスな、社会と個人がどういう関係にあるのかっていうことを考えていて、主体と構造とか、すごい抽象的な議論もしてるんだけど、それだけではなかなか学生を引き付けられないので、アニメの話とかポピュラーカルチャーのこととかを交えながら話しています。
 
濱田:先生が今の研究をするようになったきっかけは何ですか?
野村:もともと私は経済学部だったんですけど、何となく入ったから、あんまり合わなくて。もうちょっと哲学っぽい勉強をやりたいなと思って、大学院に進もうかなと。でも哲学者として生きていくのは大変に思えたし、大学にポストを見つけるのも厳しいっていうのがあったので、紆余曲折はあるんですけど、思想的なこともでき、もうちょっと具体的なところも考えられるんじゃないかとも思って、社会学の研究者になりたいなと思ったわけ。
 
自分が学生だった90年代って、ポストモダンっていう流行の思想が、ややくたびれてはいたんだけどまだあって。ジル・ドゥルーズとかミシェル・フーコーとか、フランスの現代思想の勉強をするんだったら、社会学もありかなって。やっぱり間口が広いっていうこともあってね。
 
今は、グローバリゼーションだとか、情報化とか、AIとか、社会が過渡期にあって変化してて、社会学の従来の枠組みではなかなかうまく説明できないような状況があるように思うんですね。社会と個人の関係も変わってきてるし、国民国家っていうのも揺らいできてるし、リアルとフィクションというものも、明確に分かれるんじゃなくて、非常に難しく複雑に再編成されている。そういうところで、社会学自体も理論的に変わっていくだろうし、それについていかないといけない。そういう風なことを考えているんですけど、具体的に授業で扱う時には、もうちょっと抽象度を下げないといけないんですよね。今は、実在論とか存在論を社会学とつなげて考えたりしてるんです。もうちょっと自分の中で咀嚼できたら、授業でも伝えられたらいいかな。

PROFILEプロフィール

  • 野村 明宏

    社会学部 現代社会学科 教授



    1970年神戸市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。 京都大学大学院21世紀COEプログラム研究員、四国学院大学社会学部准教授を経て、2015年大谷大学文学部准教授、2017年同大学教授、現在に至る。
    国民国家やエスニシティに関する理論社会学的研究を行ってきたが、近年はそうした研究領域を含めて、ポストモダン思想や文化研究等の理論的成果を取り入れながら、現代の社会と文化について考えている。社会学という学問領域は近代という時代に要請され誕生した学問だが、激動する現代世界ではモダニティ自体の自明性が根底から揺れ動くとともに、社会学というディシプリンも岐路に立たされているように思われる。こうした問題関心を背景にしながら、現代の管理社会化やグローバル化における社会と個人の関係をあらためて検討することを大きな研究テーマにしている。



  • 大谷大学のオープンキャンパスに参加した時に先生との接しやすさを体感して、大谷大学を選んだ。高校とは異なる勉強の仕方にも慣れ、友達とも楽しく過ごし、バイトもして充実した学生生活を送っている。
    何かに夢中になりたいけど、本気で頑張れることが見つからない。見つからなくてもそこそこ楽しい生活は送れているし、今後も安定した生活をしていきたいから、将来は公務員志望。そんな矛盾と若干の懸念にどう折り合いをつけていくのかが課題。