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きょうのことば

きょうのことば - [2017年02月]

人間は政治的動物であるだけではない。人間は何よりまず個人である。

「人間は政治的動物であるだけではない。人間は何よりまず個人である。」
フォン・ベルタランフィ(『一般システム理論』みすず書房 49頁)

 ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ(1901 – 1972)は、オーストリア出身の生物学者で、1950年代に一般システム理論を提唱した中心人物のひとりです。ここでいう「システム」とは、複数の構成要素が互いに作用しあって何らかの目的のために動作しているものを指しています。ベルタランフィによれば、機械装置、生物、社会組織などはそれぞれシステムの一種であり、一般システム理論は、これらのシステムを数理的に分析することをめざしました。ものごとをシステムとしてとらえるという見方は、多くの学問分野に影響を与えました。

 標題のことばの中の「政治的」ということばは、政治機構に関わる、という意味よりももう少し広く、社会を作ってそこに参加する、ということを意味しています。ひとりの人間はごく限られたことしか実現できませんが、多くの人間が集まって社会を作ることで、できることは飛躍的に増します。人間はより善く生きるために社会を作る、ということを「政治的動物」ということばは表しています。そして、社会もまた人間という要素から構成されるシステムであり、社会をシステムとしてとらえることで、効率的に目的を達成しうることをベルタランフィは示唆しています。

 自然界のシステムや工学的なシステムの多くは、その構成要素が分子や機械部品などであり、そのようなシステムでは、効率的な目的の達成が最大の関心事となります。しかし、社会システムの主要な構成要素は人間であり、自然システムや工学的システムとまったく同じようにあつかってしまうと、社会を構成するひとりひとりの個人が顧みられなくなるおそれがあります。それは結果として、少数派や弱者の価値が否定される全体主義的な社会を招くことにもなりかねません。一般システム理論の先駆者であるベルタランフィは、その危険性を警告する必要性を感じていました。そして、ひとりひとりの個人がより善く生きるためにこそ社会は作られている、ということをベルタランフィは「人間は何よりまず個人である」ということばで述べているのです。

 現代の社会では、経済システムや情報システムなどを中心に、効率化の追求が進んでいます。しかし、社会を生きづらいものにしないためには、社会の構成要素たる人間は何よりまず個人である、という視点を忘れてはならないでしょう。

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