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きょうのことば

きょうのことば - [2008年10月]

人皆党有り。また達る者少なし。

「人皆党有り。また達る者少なし。」
聖徳太子『十七条憲法』(『真宗聖典』p.963)

 聖徳太子が制定したとされる十七条憲法は、「和を以て貴しと為す」というたいへん有名な文言から始まります。国造りの理念を表す憲法の第一条に「和」を掲げるのは、太子自身が戦乱を経験し、人と人とが争い合うことの悲惨さと空しさを実感していたからでしょう。太子は、何よりも平和な国を造りたいという願いを持っていたのです。
 では、そもそも人と人とが争い合う原因はどこにあるのでしょうか。第一条ではその原因が、このように述べられています。

 「人には皆、仲間を作ろうとする心がある。それが原因で争いが絶えないのだが、その道理を達(さと)っている者は少ない。」

 「党(たむら)」とは「仲間」という意味であり、現代でも「たむろする」という言い方があるように人が群れ集まる様子を表します。私たちは、学校や社会において人と人との関係を築きながら生きています。その中で、おのずと気の合うもの同士が集まってグループができることでしょう。また、利害関係が一致したり、同じ理念を持つもの同士が集まった「派閥」や「党派」という集団もあります。それらのグループのことを「党(たむら)」と言います。
 この文は、人にはみな仲間意識があって、集団を作っていくという事実を述べているのです。では、そのことがなぜ争いの原因となるのでしょうか。

 よく考えてみますと、仲間を作るということは、それはもちろん自分にとって居心地がいい関係であるからに他なりません。また、時には自分にとって都合がいいからこそ仲間に加わるということもあるでしょう。しかし、仲間を作ること自体が、実は知らない間に仲間以外のものを生み出しているのです。そして、自分たちにとって不都合な存在や利益を脅かす存在が現れた時には、それを排除しようとする心が起こることもあります。自分たちの居心地の良さを守ろうとしたり、利益を守ろうとする余り、仲間以外の者と対立したり、傷つけたりすることもあるのです。それが明確な形として表れたのが、太子の経験した戦乱であったのです。
 太子は、人間にはそのような問題があることを見抜き、「達(さと)る者少なし」と、その道理に気付くことのない人間の愚かさを指摘しているのです。

 仲間を作ることは大切なことです。しかし、確かめなければならないことは、仲間を作ることによって、当然、仲間以外の外の世界も作っているということです。そのことによって傷つけているものが存在しないだろうか、また閉塞的な人間関係となっていないだろうか、と思いを致せるようになることが大事なことなのではないでしょうか。人々が本当に共に生きていける関係を考えていくことが、私たちの課題であるように思われます。

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