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きょうのことば

きょうのことば - [2004年12月]

少欲にして足るを知る

「少欲にして足るを知る」
『涅槃経』「師子吼菩薩品(ししくぼさつほん)」(『大正大蔵経』第12巻P.526)

 この夏以降、個人の身勝手な欲望にかられた殺人や傷害などの残忍で痛ましい事件が、日本各地で頻発しました。自然界に目を向けても、記録的な猛暑となって真夏日が9月の下旬まで続き、また例年になく多くの台風が日本を襲い、洪水や森林破壊、土砂災害などの被害をもたらしました。このような異常気象が、地球温暖化に由来することも指摘されています。そして、地球の環境を破壊しつつあるこの温暖化の原因のひとつが、物質的な豊かさを飽(あ)くことなく追求してきた私たちの物欲にあります。現代の緊急な課題として、改めて人の「欲望」の問題に思いを致さざるをえません。
 
 経済が何よりも優先される、いわば「欲望の時代」にあって、従来の日本では、欲望が充足される豊かな生活のなかにこそ幸せがある、と信じられてきました。それ故にこそ、これまで日本は物質的に豊かな社会を実現するために邁進(まいしん)してきたのでしょう。しかし、今日では、欲望の充足が必ずしも豊かで幸せな生活を約束しないということに、私たちはうすうす感づいています。

 人の身勝手な欲望は底なし沼のように尽きることがありません。一つの欲望が充足されても、欲望は自己増殖的に新たな欲望を生み出し、無限にふくらんでゆきます。釈尊はそのような本質をもつ欲望を「貪欲(とんよく)」とみて、もろもろの苦を生み出す原因であると教えています。

 釈尊に「少欲知足(しょうよくちそく)」〔少欲にして足るを知る〕という教えがあります。「少欲」とは、欲望にふくまれる問題点に無自覚なまま、単純に欲望を肯定し、ほしいままに欲望に従う生き方にたいする誡(いまし)めのことばです。また、「知足」(足るを知る)とは、自己中心的な欲望に執(とら)われたわが身のありかたを深く省みることを通して、真に心が満たされるような願いに目覚め、生きることをいいます。「少欲知足」という一見消極的な響きをもつことばに、欲望の問題を考えるうえで重要なヒントが含まれているのです。

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