生涯学習講座

2012年度後期受講講座
「シリーズ世界の仏教(2)チベット」ほか

2012年度後期講座受講生/福山枚彦さん

そもそも大谷大学に興味を抱いたのは、娘が文学部史学科に入学したときである。清沢満之を知り、歴史ある日本有数の仏教系大学であると知った。

娘は東洋史コースを卒業した。数年後、私も定年となりその後68歳まで仕事をした。一貫して基幹産業のプロセス制御の分野で、制御用コンピュータによるシステム構築を担当した。退職後、古希を迎え、今までの論理(デジタル)の世界から、情緒の世界を覗いてみたいと考えたのが、大谷大学の生涯学習講座受講のきっかけであった。肉体に栄養が必要なように精神(心)にも栄養が必要と思ったからである。最初の受講講座は「大乗仏教のあゆみ-親鸞の眼を通して-」であった。その道に精通された教授方による週1回90分の講義に充実した時間を過ごしたものである。それ以来、毎年続けて受講している。

本年度後期の受講講座は、「シリーズ世界の仏教②チベット」「近世語り物の源流—浄瑠璃御前の恋に酔う—」「『古事記』を読む—大国主神の物語—」「『平家物語』の人々—清盛・維盛の生と死—」等々である。
福田教授の「シリーズ世界の仏教②チベット」は、チベットそのものをよく知らない私にとって実に新鮮で興味深いものであった。とりわけ焼身自殺の映像、日々その数が増大するとの事実に驚嘆を覚えた。先生のチベット仏教およびチベットに対する造詣の深さと情熱を如実に感じた。これを機に、以前読んだ「チベット死者の書」の再読と、先生の著作『須弥山の仏教世界(新アジア仏教史09チベット)』を読み、チベット仏教を少し勉強してみようと考えた。
沙加戸名誉教授の「近世語り物の源流—浄瑠璃御前の恋に酔う—」は、ロマンあふれる物語と時代背景を朗々と、その知識の深さ広さと愛情で披露され、まさに名講義といわれるもので自然と頭の下がる思いがした。
「『古事記』を読む—大国主神の物語—」の生田講師も記紀に対する深い造詣と、記紀をこよなく愛して、熱心に講義される態度に思わず聞き惚れてしまった。浮世離れした日本古来の話に、これぞ情緒の世界と感じた。
現在は池田教授の「『平家物語』の人々—清盛・維盛の生と死—」を受講中だが、『平家物語』が全編名文にあふれた文学性の高い古典であることを初めて知った。これからの講義に心躍るような期待感を持って楽しみにしている。

いずれも諸先生方の熱心な「生涯学習講座」を意識されての講義に、心から感謝しつつ、学問の世界に身を置かれる諸先生方を実に羨ましく思った。
受付の事務の方々、また時折エレベータなどでお会いする学生さんたちの親切な礼儀正しい対応に気持ちよく参加させて頂いている。

教養とは何か——「今まで習い覚えた全てをかなぐり捨てて素裸になったとき、そのあとに残ったそこはかとない何とも言えないもの、それが教養である」と誰かが言った。私も「そこはかとない何とも言えないもの」を得たいと思っている。