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OTANI TALK

Advance2019

哲学科 p.06


このページに掲載している情報は、取材当時(2018年度)のものです。

06:自分の苦しさと、それによる救いはどう両立するか

村岡:先生の最近の研究テーマは何ですか?

脇坂:相変わらずフランスの哲学者、シモーヌ・ヴェイユをやっているのですが、この人はすごい変わり者で、絶対に友達にはなりたくない人なんですけど、考えていることが変わっているので面白いです。あとは、人間の尊厳について考えています。例えば尊厳死っていう時、自分はこういう状態になったら延命治療はしない、って決めるのは、命の終わり方を自分で決めるってことですよね。その一方で「生命の尊厳」ってことも言われていて、どんなことがあっても殺してはならないものとして生命をいわば神聖視する考えもあります。そういうふうに「尊厳」ってあいまいだよね。動物とは違って人間の尊厳はどこにあるかって、授業でやったけど覚えてる?

脇坂先生

村岡:……忘れました(苦笑)。

脇坂:ひとつの答えは考える力。理性的な思考能力があるところと答える場合がある。でもそれが人間の尊厳だとすると、じゃあ知的能力がない人はどうなるんだって話になるでしょ。脳の大部分を持たずに生まれた子どもや、認知症になったお年寄りは?自律的に人格を持って自己決定ができる人は尊厳があるけど、そうでなければ切られちゃう。限界事例って言うんだけど、この場合は切り捨てられるっていう状況をどう考えるか。

それと関連して、障害を持っていたり病気である私の尊厳を考えたとき、「この障害がなければ」っていう思いはあると思うんです。その「これさえなければ」という苦しさみたいなものと、「私はガンになって良かった」「目が見えなくて良かった」って、変な言い方だけど両立するはずなんです。

ある人が子どもの頃、父親に手足を切られたんだけど、お念仏で救われたって言ってる本を読んだことがあります。彼女は「救われた」と言いつつも、「手足がないことが私を仏の道に導いてくれたことは確かだけど、でももし手足を切り取られた人生が良いと言うなら、あなたが切ってみなさい」って言ってるんです。手足を切り取られた苦しさは決してなくならない。でも手足がなくなったことが私を導いてくれたことも確かであると。この二つを結ぶのがお念仏だって言ってて。私はその言葉の意味がずっと分からなくて、面白いなと思ってて。「苦しい」っていうことと「これで良かった」ということは、1人の人の中で両立するんです。両立しないと救われないように思えます。そのことを人間の尊厳っていうことで考えたいなと思ってて。この2つはどう両立するんだと思います?

村岡:目が見えないことや手足がないことが、短所でも長所でもないからじゃないですか?そういう特徴、みたいな。

村岡さん

脇坂:あなたがそういう背の高さであるとかいうのと同じ特徴?私ね、やっぱり単なる特徴じゃなくて損だと思う。健康に対して病気が損だって言っていいと思うんです。病気という不利益を被って、「この病気がなければ」っていう気持ち。単なる特徴だと「これがなければ」っていう気持ちにならないでしょ。本人がそう感じることはやっぱりあるだろうと思うし、そう感じる時に、それを言わせないような世の中っておかしいと思うんですよ。ただ、それを言ったときに他人が「かわいそう」「悲惨だね」って言っちゃうのはどうかと思うけど。

村岡:自分は障害を持っている人たちがどういう気持ちでいるかは知らないけど、苦しみ自体は知ってるから、そういう意味では一緒なのかなって。障害を持ってる人が社会の中で苦しいって言える場面があっていいのであれば、私たち健常者も言っていい社会になればいいなと思いました。

脇坂:苦しいってなかなか言えないんですよね。その一方で、今の世の中って、「自分の方がもっと苦しい」みたいな競争があるよね。「どっちが苦しいか競争」みたいになっていて、それはやっぱりおかしい。「苦しい」ということを、他人と比較するのではなく、本当に言えるということが、「人間の尊厳」につながるような気が私はします。

人間の尊厳って、いちばん簡単に言うと人って大切にしなければいけないっていうことだよね。本当に他人を大切にできるか、大切にするってどういうことか。そういうことを考えています。でも楽しく考えないと、しんどくなるよね、こういうの。

村岡:切り替えが必要ですよね。

脇坂:だから私、毎日銭湯に行ってます。銭湯大好きなんです。銭湯の本が書けるくらいですよ。

対談の様子



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