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そして、教壇へ。~彼らと教職支援センターの日々~

先生になるにはどうすればいいですか?2018

(10) 串 芽生子

教師は教壇で“教師”を演じる。それにふさわしい中身が自分にあるか、つねに問い続ける。(串 芽生子)[2017年3月 教育・心理学科卒/2018年度 和歌山県教育委員会採用(小学校)]

あぁ、市川先生が見ている…。
大学4年次、母校での教育実習、最後の仕上げになる研究授業の時。串は一瞬だけ頭が真っ白になる気分を味わった。もともと、上がりやすい性分なのだ。それを克服するために、大学では児童文化研究会に所属し、人形劇の制作・上演に取り組んだりもした。その成果は着実に上がっていた、はずだったのだが。
「市川先生はわざわざ和歌山まで来てくれて、それはもちろんとても嬉しかったんですが、ゼミで指導していただいていて、私のいいところもアカンところも、ぜんぶ把握されています。ごまかしがきかない、かっこつけても見破られてる…。先生と目を合わせることができませんでした」
市川先生は、しばしば学生の実習先を訪れる。現場でとまどう実習生の悩みを聞いたり、大学で学んだポイントをどう生かしていくか、具体的なアドバイスもしてくれる。実習生としては大いに勇気づけられるところだが、串の場合はそれが一回転半して、過度な緊張をもたらしてしまったのだろう。
算数の授業だった。問題文をノートに書き取らせていたのだが、当然のことながら、早い子と遅い子がいる。「書けた人は、問題文を読んでください」「読めましたぁ」「じゃあ、もう1回読んでください」「読めましたぁ」…結局5回も読ませてしまった。
「もうグダグダでした。子どもたちが応援してくれて、なんとか聞き取ろうとしてくれたおかげでやっと乗り切れた感じ」

卒業式にて教職アドバイザーの美濃部先生、馬場先生との記念撮影。

職員室を出る前に自分にスイッチを入れる、ということ。

ゼミで市川先生から教わった多くのことの中で特に印象に残っているのは
「演じなさい」
ということだった。どんなに体調が悪くても、気分が優れなくても、そんなことは子どもたちには関係ない。職員室を出る前に、自分にスイッチを入れなさい…。だが、演じるにしても、こちら側に準備と蓄積がなければその演技はすぐに底が割れる。「もう1回やらせてください!」頼み込んで実現した2回目の研究授業はなんとか乗り切ったが、「私はまだまだだ」という想いは串の中に強く残った。
「勉強は、一生懸命にしてきたつもりだったんです。でも、私には現場経験が足りなかった。現場で、子どもたちと関わる中で磨いていくスキルが必要だったんです」
現役で受験した採用試験は、あえなく不合格。落ち込む間もなく講師登録をして、和歌山県田辺市の三里小学校で、“現場での学び”に向かっていった。

面接の時、頭に浮かんだ1人ひとりの子どもたちの顔。

講師の仕事は、本職と変わらず忙しい。ボランティアなら基本的には子どもと関わることだけに注力していればいいのだが、講師には校内のさまざまな仕事を分担する校務分掌があり、保護者や地域との関わりもある。試験対策に充てる時間も体力も残っていない。大丈夫、筆記試験には、私、1年分勉強した貯金があるから…と自分に言い聞かせ、講師の仕事に邁進していった。休み時間には筋肉痛になるくらい子どもたちと鬼ごっこをして走り回り、160㎝強の長身を折り曲げるようにして子どもと目線を合わせて話す。地域の祭りや行事では、街の大人たちといっしょに子どもたちを見守った。自分がなぜ故郷の和歌山で教員になりたいか、分かったような気がした。
「採用試験の面接の時には、三里小学校の子どもたちの顔が頭に浮かんできました。現役の時には、こういうふうにしたいです、こんなふうになりたいです、と抽象的な希望を語るだけだったんですが、講師を経験したことで、こういうことをしました、もっとこうすればよかったと思います、と、具体的に語ることができました」
1人ひとり違う顔を持った子どもたち。教育とは、その1つ1つに向かい合う、1回限りの、取り替えのきかない出来事だ。その積み重ねが、教師をつくる。この春、串は地元で教師としての第1歩を踏み出す。

市川ゼミの仲間との集合写真。

母校の校長先生からお祝いのケーキ

教育実習でお世話になった校長先生から、教員採用試験合格のお祝いとしてプレゼントされたケーキ。講師期間も応援してくれていた証だ。

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