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そして、教壇へ。~彼らと教職支援センターの日々~

先生になるにはどうすればいいですか?2018

(5) 中川 純一

熱心に教えてくれた指導教諭への恩返しは、自分が立派な教師として実習生を育てること。(中川 純一)[2018年3月 教育・心理学科卒/2018年度 奈良県教育委員会採用(小学校)]

にぎやかな昼間とは一変、静かに佇む夜の小学校に、ひとつだけ未だ灯りの消えない教室がある。向き合って熱く意見を交わす教育実習中の中川と指導教諭。机の上の指導案には、メモや添削がびっしり書き込まれていた。
実習先に選んだ奈良県の母校で、中川は大変熱心な指導教諭の先生に出会った。ただ1人の実習生にもかかわらず、毎日子どもたちが帰宅した後、マンツーマンで夜遅くまでみっちりと指導してもらえる。ありがたい環境だった。「教師力」を付けるために特に重要だと教わったことがある。「関係づくりをおろそかにすると子どもたちは付いてきてくれなくて、授業も何をしているか分からないまま終わってしまう。良い関係ができていれば、授業中に分からないことがあっても『先生、これはどういう意味?』って子どもから質問してくれる。子どもたちとの関係づくりを大切に、とはすごく言われましたね」
土日に休日返上で1日中指導してくれたこともあった。指導案づくりに加えて模擬授業、採用試験の面接練習も見てもらった。研究授業とその直後に採用試験を控えており、しかも周囲に奈良県を受験する先輩がいなかった中川にとって、とにかく感謝してもしきれない存在である。しかし、なぜ実習生にそこまでしてくれたのか? 「その先生が学生のときも、実習先でこんな風に熱心に指導してもらったそうです。『どうやってお返ししたらいいですか?』と実習指導担当の先生に聞くと、『お返しは自分にではなく、次にあなたが持つであろう教育実習生へしてあげてほしい』、とおっしゃったらしく」。幸運な実習生の座を射止めたと同時に、「お返し」を次代へつなぐ大切な役割をも託されたことになる。

実習先の子どもたちに囲まれて。中川の好きな言葉「笑顔」のあふれる学級だった。

苦手を自覚して積極的に取り組み、周囲の人々を巻き込んで一緒に克服。

採用試験の準備は2年次の9月頃、筆記試験の対策から始めた。同学年の友人達より早い時期にスタートしたものの、勉強方法は自己流。次第に不安になってきて、教職支援センターを訪ねることになる。「アドバイザーの先生からは、まず過去問を解いて傾向を知ることが大切、と言われました」。勉強の場を図書館から教職支援センターに移した理由はいろいろあるが、1番は「困ったときに、いろんな人がいて助けてもらえる」ことだ。元々勉強は得意な方ではない。知識や技術の面で頼るのはもちろん、精神面でも「今がんばらな、いつ頑張るねん!」という職員さんからの激励に背中を押され、歯を食いしばった。
苦手な筆記試験と並んで、対策に力を入れたのは面接試験だった。ぼんやりとした憧れから教師を目指し始めた中川には、特筆すべき志望理由や教師とのエピソードがない。けれども「子ども1人ひとりを理解して笑顔にできる先生になりたい」という想いの強さは誰にも負けない。だからとにかく回数を重ねて練習し、あらゆる質問に備えていく。さまざまな価値観や視点を知るために、アドバイザーの先生、友達、教師塾の先生など、周囲の人々を捕まえては練習に協力してもらった。もちろん、その中には実習先の指導教諭も含まれていた。

目指すは「言葉を大切にする学級」。次代の教育実習生へ、恩返しを誓う。

迎えた面接試験本番。「どんな学級をつくりたいですか?」という質問に対して、中川は「言葉を大切にする学級」と答えた。それまで下を向いてメモを取っていた面接官がパッと顔を上げたのを見て、手応えを感じた。「クラスって、すごく言葉に左右されると思うんです。あんまり良くない言葉、『嫌い』とか『死ね』みたいな言葉があるクラスにはいじめや不登校の問題が起きやすい。でも人を笑顔にする『ありがとう』『すごいね』っていう言葉がたくさんあるクラスは、温かくて居場所ができやすいから」。徹底的に学ばせてもらった教育実習。その現場で自分なりに見出した学級づくりの答えを胸に、4月から教壇に立つ。
「僕も、教育実習生を持ったときは土日返上で教える心づもりです」。ただ、ご本人に何もお返ししないのはどうしても我慢ができない。恩師の指導教諭とは、初任給で酒を酌み交わす約束をしている。

びっしり書き込まれた「面接ノート」

新聞の切り抜きや自身の経験など、受け答えの材料が詰まっている。自分の言葉で話すために、文章でなくキーワードを並べるよう工夫した。

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