ここからサイトの主なメニューです

Home > 入試情報 > 朝日新聞 掲載 2015「今、切り開く 教育力」 > Vol.01 荒瀬 克己 教授

入試情報

朝日新聞 掲載 2015
「今、切り開く 教育力」

Vol.01 荒瀬 克己 教授

自分で考えて動ける 主体性のある人間を育てる

このページに掲載している情報は、公開当時(2015年度)のものです。


「今、切り開く 教育力(高大接続編)」記事一覧ページへ戻る

しなやかに考え したたかに行動できる若者を育成

— 荒瀬先生は、京都市立堀川高等学校の校長時代に高校改革に挑み、その成果が「堀川の奇跡」と称されました。大谷大学の教員となられ、どのような人間を育てたいとお考えですか。

 さまざまなものに興味を持ち、自分自身で課題を見つけ、考えて、行動に移せるような人を育てたいと思います。例えば、すでに国民投票の投票権が18歳以上に引き下げられましたが、選挙権年齢も18歳以上とする公職選挙法改正案が成立する見通しです。若い人たちの投票率の低いことが取りざたされますが、税金、年金、教育、安全保障、経済、エネルギー、食糧、外交、どれをとっても、政治は個人の生活に大きな影響を与えます。自分自身を大切にするという意味で、ぜひ選挙に行く人になってほしいと思います。誰に投票すればよいか分からなければ、白票を投じればいい。参加することが大事だし、それが政治によい意味の緊張感を与えます。社会のことを、ああだ、こうだと考えるほどよくわからなくなります。その複雑さにじっくりと向き合い、自分なりに問題を解こうとする人になってほしいですね。

 難題や難問を意味する「ゴルディオスの結び目」という言葉があります。その複雑な結び目をアレクサンドロス大王が一刀両断したという伝説が有名です。しかし、結び目はやはり、手でほどかなければなりません。一人でできなければ誰かと一緒に取り組んでもいい。しなやかに考え、したたかに行動することが求められます。これからの時代を生きていく上では、複雑なこと、面倒なことを経験し、困難に向き合うことのできる本物の強さを身につけることが大切だと思います。

 そのためにも、「アクティブ・ラーニング」が重要です。学生が主体的、能動的に学ぶための仕掛けづくりです。小中学校や高校でも、次の学習指導要領のキーワードになります。学生と教員、また学生間で、双方向の学びが深まることにより、考えて行動する力がついていきます。

 とはいえ、教壇に立って教員が話す、一方向的な授業が良くないわけではありません。グループ活動は「アクティブ・ラーニング」の一つの形態ですが、グループでの取り組みが目的化することは間違っています。知識と指導力のある教員が到達目標を持ち、学びのバランスを取って教育すべきでしょう。

グループで課題に挑み 自らを評価する「探究基礎演習」

— 高校で取り組まれた体験型の授業では、「受けとる力」「考える力」「判断する力」「表現する力」を獲得し、課題の設定能力と解決能力の養成を目指されました。大学でもこのような学びを実践されているのですか。

 PBL(※)として「探究基礎演習」を始めました。京都市学校歴史博物館(下京区御幸町通仏光寺下ル)をご存じでしょうか。市内の学校に残された教育資料、学区民らが寄贈した美術工芸品などを収蔵・展示している京都市教育委員会の施設です。この博物館の存在意義を考えて、来館者数を増やすための方策を案出するという授業を、学生主体で取り組んでいます。

 学生は、学芸員の指導で博物館の現状や企画展などについて学び、グループ内で意見を出し合い、それらをまとめて発表します。他のグループの主張を聞き、疑問点を質問したり、指摘したりもします。さらに、「ルーブリック」という、学習到達状況を評価するための評価基準表を自分たちで作成します。取り組みの良い点や不十分なところに気づいて、自らの能力開発につなぐためです。このような体験を通して、思考をアクティブにさせ、主体的に学んでほしいと願っています。

(※)PBLとは、Project Based Learning(プロジェクト・ベースト・ラーニング)の略称。「プロジェクト型学習」や「問題解決型授業」などと訳されることが多い。PBLには、課題の解決を目的とする、チームの力によって課題を解決する、学生の自主性・自律性を重んじる、といった特徴がある。

対談の様子

生徒、学生を主体に 高等学校と大学の学びを接続させる

— 大谷大学は、高大連携事業に積極的に取り組んでおられます。荒瀬先生も高大連携推進室のメンバーですね。高大連携について、どのようにお考えですか。

 高等学校と大学の連携は何のためにするかということですが、学ぶ主体である生徒、学生にしっかりと焦点を当て、学びの接続を図ることが重要だと考えます。

 しかし、まだまだ課題が多いのが実情でしょう。高等学校が取り組む内容を大学に丸投げしたり、大学が一過性の出前授業を行ってみたり。

 大学が持つ様々な教育力を、高校生に提供すること自体はとても素晴らしいことです。ただ、それが高等学校教員の指導力向上につながらないのなら、もったいない話です。高等学校と大学の垣根を越えるような取り組みが必要でしょう。

 大谷大学では「人間教育プログラム」という育成プログラムを実施しています。プログラムでは1年生次から3年生次までの育成課程を取り決め、3年間のプログラムを修了した生徒は、指定校の育成枠を利用して本学に入学することが可能です。ここでは共働性に配慮した主体性の育成、「読み書き」能力の育成に力を入れていますが、生徒はもちろん、ともにプログラムを担う大学と高校の教員もまた教育力をアップする機会になっています。

学問研究を通して学んだ解決能力は 社会で生きる基礎に

— 高大接続に関して、大学の入試改革ばかりが注目されますが、高校、大学も変わらなければなりません。どのように変わるべきでしょうか。

 大学入試の改革は、高校教育や大学教育の改革とつながって初めて意味のあるものになります。大学の「機能分化」という言葉が使われます。研究を軸に展開する大学、教養教育に重点を置く大学などで、それぞれの機能が重要です。とくに教養教育を進める大学には、学問研究を通して、学生が課題と向き合い解決の糸口を探ることのできる能力を身につけることが求められます。授業やゼミで学生、教員と切磋琢磨し、身につけた課題解決能力は、社会で自立して生きていくための基礎である汎用能力となるはずです。

 日本の高校生が勉強しなくなったことを示すデータがあります。それによると、いわゆる成績中間層の家庭学習時間は、十数年の間に半減しています。高校時代に勉強しなかった生徒は、大学に入っても同じで、就職してから3年以内の離職率が高いと指摘する研究者もいます。勉強する、学ぶということはとても大切です。

 大学で学ぶためには、一定の準備が必要です。高校までの間に、生徒たちには自分自身の学びの度合いを見極める力を、身につけておいてほしいと思います。自分には何が分からないのか、何が不足しているのかを振り返る力です。大学の授業で「先生の話が分かりにくい」と感じるのは、教員に原因があるのか、自分に原因があるのか。自分の学びに原因があるのなら、対策を講じることもできるでしょう。社会に出れば、目の前の課題に向き合って、自分の力で立ち向かわなければなりません。今の学びは、必ず将来につながっています。

言葉を広く学ぶ「言語技術」を磨く機会を作りたい

— 荒瀬先生は大谷大学に着任されて、1年を迎えられます。これから試みたいことを教えてください。

 学生たちが言葉を獲得し、磨いていける機会を作っていきたいと思っています。私は「言語技術」に関心があります。私の考える「言語技術」とは、コミュニケーションも含めた、広い意味での言葉の活用能力です。例えば、ものごとを論理的に考える、逆に、思いつくままに考えて記録する、相手の理解度を考えて話す、聞く、うなずく、読む、書く、すべてを含みます。

 言語の活動を技術ととらえると、敷居が低くなるように思います。技術ですから訓練によって誰でも上達します。そのための多様な取り組みの場を作っていきたいと考えています。大谷大学が重点を置いて取り組んでいる「読み書き」にもつながる学びです。

教員紹介

[文学部 教授]荒瀬 克己

荒瀬 克己(あらせ・かつみ)

1953年京都府生まれ。京都市立堀川高等学校校長、京都市教育委員会教育企画監を経て、2014年4月から現職。国立高等専門学校機構監事、福井大学教職大学院客員教授、関西国際大学客員教授。中央教育審議会初等中等教育分科会、教育課程部会、キャリア教育・職業教育特別部会、高大接続特別部会などの委員を歴任。専門は言語技術・国語教育・学校経営。著書に「奇跡と呼ばれた学校」(朝日新書)など。

荒瀬 克己(文学部文学科 教授)紹介ページ



「今、切り開く 教育力(高大接続編)」記事一覧ページへ戻る

Home > 入試情報 > 朝日新聞 掲載 2015「今、切り開く 教育力」 > Vol.01 荒瀬 克己 教授

PAGE TOPに戻る

ここからサイトの主なメニューです